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あさねぼうの節目、上海2007



わたしはそのとき、上海に住んでいたのね


最初、ファンシーな賃貸の部屋を借りて

好きな雑貨を飾って


ひとりで住んだのだけど


当時はまだまだ暗黒時代の真っ最中、

寂しさに、不純な恋愛に、過食嘔吐にやめられないタバコと
日常の強すぎる刺激


混沌とした高度経済成長期のスモッグにまみれた街のエネルギーに

わたしの足元は、24時間ふらふらだった。



そのうち
どうしても独りに耐えられなくなって

アメリカ人やらスウェーデン人らがシェアしていた高層マンションに引っ越し、つかの間の安心感のなかでほっと、生活したあと


仲の良かった同居人らが一斉に国に帰る時期がきて


また、置き去りにされて独りになってしまった私は

同じようにその部屋を出ることにしたの


そのあと見つけた部屋の住所は、

淡水路という名前だった


中国には高層マンションしかない

地震が来ないからかな

どの建物も、20階とか


眺めは良いのだけどね



13階だか何階だかわからないマンションの一室を

わたしは借りて


その奥に住んでいたユダヤ人の彼の部屋にはシャワーがついていて

ベッドはキングサイズでおおきかった


柔らかい光がさす窓辺にベランダがついていて、
いつもカーテンがゆらゆらゆれていて



わたしは、

すぐに自分の部屋じゃなくて

その部屋で眠るようになったのだった。


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