水の無い台所- June
思い思いの水無月は
こっちでもあっちでも着実に過ぎて行って
水のない月の間わたしは混乱したまま
気づいたら時間だけが過ぎていた
そんな夜
久しぶりにもう一度
色々な事を素直に楽しいと感じられて
もう一度シンプルに、いこうとやっと思えて
食べる事も料理をすることも
苦しくてしょうがなかった数日を抜けて
カリフラワーを食べたときに、
なんと、カリフラワーの味がした。
そのとき本当にほっとして
にんじんが、甘いと感じられる
そんなあたりまえの感覚を失っていたわたしは
またふくざつんなりすぎている出来事を
片付けてゆくことを始める
自分がどこまでも自分ではなくなってゆく気がした
どんどん世界が小さくなってゆく気がした
ぎゅぎゅぎゅと縮こまっていたのが
もう一度、
たちどまって
遠くの方から、望むよに
◯
さて、朝おきて、いつぶりかに、ダシを引いた。
心を整える一番の方法は、早寝ハヤオキだと思う。
場所はニューヨーク市、Soho
ベジタリアンレストランのリストに乗っているのに
なぜか魚やエビがメニューにある店の
夜のキッチンを任されているわたしは、
店を閉めて、くたくたになって、
24時間動く深夜の地下鉄に乗って
マンハッタン島の上のほうまで
帰らなければいけない。
それならば、今のわたしには、早起きの
代わりに出汁を引く道しか残されていない。
豆を炊くのも効果がある。
うそだとおもうなら、やってみるといい。
朝から、米を鍋で炊いて、みそ汁を作る。
魔法みたいに、心が静まるのがわかる。
不思議なもので、
なにをためしても駄目な人生における問題が、
出汁をひいたら解決することがあるものだ。
そんなもんだろう。
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