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簪と音を装うということ

いつか私が死ぬときに、私が集めたものたちが誰かの元へ行けるようにという祈りの代わりの記録。

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装飾品の中で髪飾りは一等に好き。最も身につけるのは耳飾りと腕輪。次点で首飾り。

そもそも髪飾りは髪を結ったり丁寧に整えてからつけるものが多いから普段使う機会はほとんどない。それでも持ち物の整理をしていると、バレッタと簪が多い。そしてそれらは使わないのに手放そうと思わないものばかりだ。

もともと絞っている持ち物の中で一番を決めるのは難しい。けれども、もし何か悪いことが起きて、避難しなくてはいけないということになれば、この対の銀びら簪は持ち出すものの一つになる。

花だけが、半分に割れたくす玉を作るように並べられたシンプルなデザイン。日本らしさが抑えられていて鈍い銀色一色のこの簪を、いつか洋装に合わせて、結い上げた髪に挿してみたい。水面に乱反射する光に音があればきっとこんな感じなのかなと想像する音が、動くたびにシャラシャラと小さく鳴る。この上なくロマンチックな装いだ。

装いは視覚と嗅覚に関するものがほとんどだと思っていた。今の時代の西欧的な生活様式で成り立っている国でそれはきっと本当のこと。でも日本の簪は金属のビラや鈴がついていたし、アジアや中東やアフリカの国々の腕輪などは何重にも重なり合って音を奏でる。

まるで今の時代の内側カメラで使われるフィルターだ。彼らは音に光を見て、光の粒を纏うようにそれらで自身を飾ったのかもしれない。

きっと次の持ち主もこの簪を身につける機会は少ない。私だって日々の楽しみ方は飾っておいて、たまに手に取ってゆっくり揺らして耳を澄ませるだけ。少し高価で飾りっけのある大人用のラトル(赤ちゃんのガラガラ)のよう。

あなたの耳に光を届けるものとしても、あなたの周りに光の粒を浮遊させるものとしてでも、そして私に思い付かなかった方法であっても、誰かに愛しんでもらえますように。

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