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【訂正あり】SANKYOの作った中期経営計画、業界人に見てほしい内容だった

訂正

SANKYOは漫画に参入すると思えないと書きましたが、2018年より一二三書房のコミックポルカへ出資していました。お詫びの上訂正いたします。教えてくださった業界関係者さま、ありがとうございます。

画像引用・コミックポルカ公式X
まったく知りませんでした(汗)


この記事は

・中期経営計画の策定を拒否し続けたSANKYOが、突如これを策定。内容は地味ながら、見るに値する内容だったので解説します。

中期経営計画ってなんだね?


中期経営計画とは、企業が3~5年のスパンで目指す「現状から見た将来のあり方」を策定する計画のこと。具体的には、以下のような要素を含みます。

経営理念の明確化

企業の理念とは経営者の理念を明確にします。どのようなビジョンを持ち、どのような社会貢献を目指すのかを示すよ。いわば「カッコイイ建前」「あるべき姿」のこと。

自社の現状と外部環境の理解

「あるべき姿」を実現するための目標を立てるには、自社の強みや弱み、競合環境、市場動向などを把握せねばなりません。特に戦略的優位性の確保が重要になるよね。

数値目標の設定

「あるべき姿」を企業が達成すべきあるべき姿を明確にし、実現できる客観的な数値目標を立てます。

これら3要素を主に盛り込むことで、長期的な経営ビジョンを実現するための中期の目標(3~5年の間にやっておくべきこと)が見えてくる。

10年後を見る長期経営計画(経営理念)と、単年の業績予想である年間計画の間にある穴を埋めるのが中期経営計画。売上や利益の目標、儲ける効率を示すROEなど定量的な数値で示しています。

20年ほど前、メルマガで「ビジョン(理念)・ミッション(使命)・アクション(行動)」の策定と更新を提唱しました。これを置き換えるなら、ビジョンは長期経営計画、ミッションは中期経営計画、アクションは年間計画でしょうか。


SANKYOは中期経営計画を否定し続けた


上場会社はコーポレートガバナンスレポート(企業統治に関する投資家への報告書)を提出します。SANKYOは毎度毎度、中期経営計画の策定を否定し続けた。

2024年4月16日に提出したレポートにもこうあります。

当社の主力商品である遊技機は、そのゲーム性や仕様を公安委員会が規定する遊技機規則や、業界団体の自主ルールなどの規制に従って開発しております。しかしながら、規制の改定により開発内容を変更することが多々あり、改定の内容によっては、経営環境に大きな影響を与えることも否定できません。そのため、中期経営計画を策定・公表しても、基本的な前提が変化してしまい、株主や投資家の皆さまをミスリードしてしまう可能性があるため、変化への対応を重視した経営の実現を優先しつつ、単年度ごとの目標を作り上げ、その達成に向けて取り組むことが、ベターな選択であると考えております。

中期経営計画なんて作ったって規則改正されたら予定通りに出せないんだから意味ねえんだよwww という主張。SANKYOは毎年(記憶では2020年には)この文言をコピペしていました。

まあ、これはこれで「せやな」と思います。実際、ここ数年はP機S機への切り替えやスマスロで業績を伸ばしましたからね。業界のヤラカシ→警察による締め付けなんかも予想できない。

とはいえ、2024年4月16日にここまでキッパリ中計策定を否定しておきながら、同5月9日に発表するなんて、どうなん?

否定の3週間後に発行した中計
画像引用・SANKYO公式(PDF)

3週間程度で作れるはずもなく、4月16日の段階で策定は大詰めだったハズなんです。なのにコーポレートガバナンスレポートで「策定しない」と言い切ったのは、むしろガバナンスに問題あるんじゃね?


SANKYO VISION 25-27


皮肉はここまでにして、SANKYOの中期経営計画を見てみましょう。パチンコ・パチスロ双方で今、もっとも勢いのあるメーカーがパチンコ業界の今後をどう考えているか。自社の未来をどう描いているか。示唆に富んだ内容でしたのでお楽しみください。

記事内の画像は全て公式からの引用です。原本は以下のPDFです。


表紙

「持続的成長」をサブタイトルに据えました。今、SANKYO経営陣が見ているのはこれです。エヴァ15にユニコーン、スロもヴヴヴ、炎炎、からくりとヒットを出し続け業績を伸ばし続けた。これをいかに〝持続〟させるかが重要だとの認識でしょう。

逆にいえば「ここ数年は出来すぎ」との認識もうかがえます。


骨子

注目したいのは3点。一つ目は中央左の「事業戦略」です。パチンコの盤石な体制を維持しつつ、パチスロで成長を加速させるとのこと。

パチンコの未来に限界を感じつつ、パチスロはまだ伸びしろがあると見ているのでしょう。この感性は極めて現実的かと思います。

と同時に、遊技機事業以外は手を出さないよとの宣言にも見えますね。

次に中央右の財務戦略。ROEとは経営効率の高さのこと。簡単に言えば「効率よく儲ける力」です。今後もROEを意識するなら、機械代の値下げは望み薄でしょう。

最後に中央下。IR・広報機能の強化はちょっと驚きました。週刊誌で報道されてしまった権力闘争のマイナスイメージを払拭したいのかも?


中期展望(3年後の姿)

このページは良い。野心を全面に押し出しており、とても良き。パチンコのシェアNo.1を維持するだけでなく、パチスロでも3年後に15%を獲得するのだと。

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