とんかつ

　とんかつを意識するようになったのは、夫とデートするようになってからだ。この人はデートでとんかつをいつも食べるんだなあ。自分がすきなもんは相手も好きだと疑わない。ちょっと、腹がたった。でも、結婚してからも、とんかつを作ると喜んでくれるのでいつしか、得意料理になり、こどもたちも大好きになり、いつしか我が家の定番となった。もう１００回以上作っている。とんかつは家族がつらいとき、楽しいときの定番になり、思い出の味となった。それまでは、なんてことのない料理で意識したこともなかったし、作ろうとも思わなかった。喜んでくれるものが好きになるって、ずいぶん自分がない。そう思いながら、ありがとうっていってくれるのって、うれしいんですね。人と暮らすってそういうもんなのかもしれない。これを馴れ合いというか、情というか。でも、そもそも、自分のきもちってなんだ。そんな決めつけるようなもんでもなく、ゆらゆらと動くのだろう。