ひとはそれぞれ 家もそれぞれ

 電力王松永安左エ門の老欅荘は一度訪れたのですが、また、行ってみました。尾根沿いの竹林をとおりると、以外と近いです。昔の別荘のご老人たちは、こうやってお互いを訪ねたのでしょう。おおきな池があって、そばにお茶室があり、市民の方が賑やかにお茶会をもよおしていました。今、公共の場として解放されているのもありますが、気さくでざっくばらんなところです。前も心地いいなあと思ったのですが、NHKで放映された彼の伝記ドラマを見たり、箱根湯本のはつ花そばに行ったとき、ひいきにしてた彼のエピソードを知ったりして納得です。家にもその茶目っ気のある性格が表れています。家のなかは茶道好きの彼がしゅみをたのしむため炉が置ける部屋がいくつもあります。お客用の茶室、準備室である水屋、そして控えの間、玄関脇にはプライベート用の茶室。いく人もにぎやかにお茶ができるようになっているのです。不思議だったのは彼の部屋がお勝手口と台所の向かいにあり、その奥が明るく解放的な客間になっていることです。昔の大家のような上客用の玄関はあります。これですね。

 そこは奥様のへやがあり客間が遠すぎるのです。たぶん普段使っていたのはこちらの玄関なんです。

ここから庭にはいると

あかるく清々しい客間に入れます。もちろん庭には茶室のにじり口もあります。お茶の作法とか茶室の形式とか、てんでわからないのですが、人と気持ちよく過ごす工夫がいっぱいです。そして、落ち着いた部屋では明り障子ごしの光がすてきです。

最初に尋ねた黒田邸は密やかな家庭のあったかさ、古希庵は老人の若き日のふるさとへの郷愁、そして、最後は台所向かいの部屋から感じる無邪気を感じて、それぞれです。さて、板橋の商店街の裏手に箱根沿いの早川から流れる戦国からある小田原用水が流れています。ブラタモリでもやっていましたね。なんてことない水路ですが、しょうゆやの蔵があったりして、古くからの切実な生活用水だったことがわかります。

猫がみえますか。ご近所まもってパトロールしてます。


 用水は東海道沿いの国府津の森戸川に流れ込みます。古い書店である伊勢治書店の裏手のカトリック教会、日本キリスト教教団の教会をへてあるいていくと、小田原出身の私小説の作家、川崎長太郎という人がえがいた遊郭、抹香町のあたりです。そこにも水路があります。なにもないさびれたところでが、ひとのいとなみのなごりがあります。残念ながら小田原のむかしはじっと目をこらさなければわかりません。しかし、そこには人々の生活の重なりが見えてきます。小田原は1日でかなりのところを回れるし、美味しいものも結構あるので興味のあるかたはどうぞ。

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