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マァムの鉄拳に見るギャグとシリアス 〜ダイの大冒険(2020年版)第8話〜

ダイの大冒険2020、第8話が放送された。クロコダインがロモス城に攻め込み、そこにダイが駆けつけるも、ザボエラの入れ知恵によるブラスを使った「人質作戦」に苦しむところが描かれる。

今回見ていて思ったのは、91年版と比べて、2020年版は「アニメ的」な演出が洗練されているということだ。
というか、これまでPodcastで発見してきたように、91年版と2020年版は演出の方針にかなり違いがある。
漫画を基本として、表現も漫画的であるのが91年版。ギャグマンガ的なデフォルメの演出も多い。
一方で、2020年版では漫画原作にリスペクトを持ちつつ、短縮含めて様々な構造的制約をむしろ活用しながら、大胆な再解釈をしつつ、現代アニメの技術やビジュアルのスタイルに沿って制作している。

それを今回特に感じたのは、ダイたちと偽勇者でろりんたちが宿屋で対面するシーンだ。

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91年版では、近況を話すでろりんたちに対して、巨大化したダイが怒るというギャグマンガの表現が使われる。
対して2020年版では、ポップとダイの前に横からマァムが重なって入ってくる、そして3人の顔がすべて視聴者の側を向いている、という演出になっている。キャラクターの顔を視聴者にわかりやすく見せるようにした現代的なアニメ演出だなと感じた。

あとは、今回だと、ダイを助けに行くのを嫌がるポップをマァムがぶん殴るという重要シーンの描き方に関しても顕著な違いがあった。

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原作では、パンチによってポップは壁がぶち抜かれるほどに吹っ飛ぶ。
91年版アニメでも、角度は違うものの、やはりマァムのパンチを受けたポップは壁を突き破る。
シリアスなシーンであるのに、壁を破るほどぶっ飛ぶというのは、むしろギャグ的描写によってシリアスさを和らげる表現だという解釈ができる。
対して2020年版では、殴られたポップは壁に打ち付けられるが、壁が多少凹む程度である。ギャグ的表現が抑えられた形となった。言い換えるなら、ギャグによる緩和がないということでもある。
(比較に関してはカバー画像参照)

まったく別のシーンになるが、ザボエラが悪魔の目玉を通じてクロコダインとダイの戦いを見ている場面の描写にも大きな違いがあった。
91年版では、背の低いザボエラに対して、人間型の体格の魔術師たちが後ろにいるという構図になっている。対して2020年版では、なぜか魔術師たちの頭身が3頭身くらいになっていて、ザボエラの後ろにずらっと並んでいる。
ふとこのシーンを見ると、現在発売中のコラボ・スナック「ダイの大冒険マンチョコ」のシールに描かれるキャラたちをなんとなく想起した。

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ここに関しては、なぜ91年版のほうが「リアル」な頭身で、2020年版のほうが「コミカル」な頭身で表現されるのか?
私の予想は、「ゲームのドラゴンクエストに対するリスペクトを盛り込んだ」からではないかと思っている。
ゲームのドラクエ2に出てくるまじゅつしの画像を貼っておく。これを見てわかるとおり、スーパーファミコンのゲームでは3頭身程度のグラフィックになっている。

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↑画像は こちら から引用。

以上が、今回の第8話を見て私が感じたことだった。
次回は、ポップが勇気を振り絞ってダイに加勢し、クロコダインと戦うシーンが描かれる。序盤の重要な展開だ。楽しみである。

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ダイの大冒険について語るPodcast、「Cast a Radio」を毎週配信しています。こちらから聴けます!ダイの大冒険ファンの皆さま、よかったらお楽しみください!
【ポッドキャスト】Cast a Radio https://onemore.jpn.org/castaradio

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