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ダイの大ジャンプ!? 〜ダイの大冒険(2020年版)第15話〜

ダイの大冒険(2020)の15話が放送された。フレイザードとの最初の戦い、氷炎結界呪法の発動、バルジの塔からの退却、マトリフとの対面、までが描かれた。

今回まず驚いたのは、フレイザードがレオナを殺そうとしたシーンを食い止めるダイの登場方法である。
原作では、明確なシーンとしては描かれないものの、おそらくは塔の屋上につけた気球から急いでダイが飛び降りて、フレイザードの前に立ちはだかったのではないかと推測される。91年版アニメでは、明確に気球から下ろしたはしごを使い、スイングさせてサーカスよろしく塔の中に飛び込むダイが描かれる。
2020年版では、登場の仕方はすごい。パプニカのナイフを投げつけてフレイザードの右肩に刺し、動きを止めて、その後に即座にダイが現れる。しかし、その時点では、気球はなんとまだ塔にたどり着いていないのである!ダイがフレイザードの前に降り立ったあとに、気球が塔に向かうシーンが描かれる。しかも、距離がまだけっこうある(笑)。画像はカバー参照いただきたい。

うーん、ダイはどうやって気球から塔に降り立ったのか。この時点では竜の紋章は発動されていないし、自力でのトベルーラもまだ覚えていない。信じられないほどのジャンプ力があるのだろうか。ダイの大ジャンプ。
それとも我々の知らないところで、気球にはパラシュートでも搭載されているのだろうか。あるいは、ゴメちゃんのスーパーパワーの前借りでもしたのであろうか…。大穴予想は、力自慢のマァムにぶん投げてもらったとか(笑)。

あとはフレイザードが仕掛けた氷炎結界呪法のビジュアル表現がやたらすごかった。2つの塔から立ち上る炎と冷気のエネルギーがスパークして、強大な結界が形成される。正直表現のインパクトとしては、後の最終の敵である大魔王バーンの戦闘シーンよりもひょっとしてスゴいのではないかという予想すらしてしまうほどに。
と思って91年版アニメも見てみたら、こちらでも相当迫力ある演出だった。

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どうやらフレイザードの氷炎結界呪法は、見た目は相当にスゴく描きたくなるものなのかもしれない。ただし、その呪法それ自体の防御力(というか妨害に対する弱さ)はかなりショボくて、のちにクロコダインの獣王痛恨撃であっけなく破壊される。さらにヒュンケルの破壊シーンに至っては、何の技を使ったかすらも表現されない(笑)。見た目はスゴいものの、維持が難しい繊細な呪法と言わざるを得ない。そもそも塔の中にいないと効果が出ないという点も含めて、実戦投入向きな戦法とは言い難い…。
しかし前回のnoteでも書いたが、氷炎結界呪法もまた、炎と冷気の組み合わせによって何か特殊な力を発揮させていると考えると、これまた相当メドローアに近づいていたのではなかろうか。ほんとに惜しいねフレイザード。魔王軍という組織の信頼感のなさと、フレイザード自身の出世欲・手柄への渇望が、成長への道を閉ざしたのだ。

ほかは、2020年版に限ったことではなく、そもそものストーリーに関して思うこととして、このフレイザード初戦におけるマァムの活躍が凄まじすぎる、という点を触れておきたい。氷炎結界呪法をかけられて、戦力がガタ落ちになっている中、フレイザードに対する勝機が薄いということを判断し、退却の方針を決め、そのために逆上して作戦に乗れないダイを後ろからハンマースピアでぶん殴って気絶させるという鬼手に出る。その判断行動にはフレイザードですら驚愕している。そして、ダイを軽々と担ぎ上げて逃げるマァムに対して、当然のごとく追撃をかけるフレイザードが魔力を集中させて指先めがけて、天才的コントロールでギラが詰まった魔弾銃の弾を投げつける。弾は見事にフレイザードの人差し指に刺さり爆発炎上。氷炎結界呪法の中ではダイたちの攻撃力は遥かに低下するという不利な状況下で、フレイザードの魔力を使って爆発させるという超頭脳プレーで、退却に成功する。
以上見てきたように、このときのマァムの判断力、行動力、技術力は次元が違うレベルに達している。間違いなくパーティーを救ったMVPとして、後の世の伝説で語られていいレベルだ(笑)。

のちにポップが成長し、大魔道士としてアバン以上の切れ者として、大魔王の計略を打倒していく胸アツのシーンが描かれるが、判断力の観点でポップが参考にすべきはマトリフよりも、アバンよりも、フレイザード初戦のマァムなんじゃないかとふと思う(笑)。
ここまでの冴えっぷりを見せたマァムは、その後は腕力&慈愛という特徴にフォーカスしたキャラの描き方となっていく。特にアバンがキルバーンとの決闘に誘い込まれて消えてしまったシーンでは、まったく冷静な判断力を失って、ミストバーンの時間稼ぎにまんまと乗りかけてしまう寸前であった。このときはレオナがリーダーシップを発揮して、パーティーを導くことになる。
長期連載と、キャラの増加や個性の描き分けに伴う、役割の変化の都合でそうなった、といってしまえばそれまでかもしれないが。マァムの肩を持つ見解を述べるとするなら、フレイザード初戦でピンチになっていたのは初対面のレオナであり、正直ほとんど面識がなかったので冷静に判断できた。しかし後にピンチになったアバンは敬愛する先生だったので冷静な判断ができなかった。そんなことも言えるかもしれない。

フレイザード戦に話を戻すと、退却する気球の上でマァムがポップに対して、上記の爆発について解説するシーンがある。それに対してポップが「よくそんなの思いついたな」とマァムを讃えている。このシーンは原作にはない。原作ではフレイザード自身が、ギラの詰まった魔弾丸の弾による誘爆被害を解説(?)してくれる。「あの女かわいい面してけっこうやりやがるぜ」なる捨て台詞とともに。もちろん今回のアニメではその捨て台詞も描かれない。ということで、フレイザードの登場シーンを減らし、主人公たちの言動が増えたことになる。このあたりの演出の変化もまた、2020年版らしさかもしれない。

あとは今回は、気球に追いすがる大量のフレイムたちを、エイミやポップが氷系呪文で撃退していくシーンも原作や91年版アニメと違っていた。91年版では氷系呪文を食らったフレイムが散るように吹き飛ぶシーンがあるが、なぜか2020年版では灰色に変色して墜落していく(笑)。画像は以下を参照。

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この点は、なんだか原作よりもずっとギャグ的な要素が強く感じる。基本的にシリアスに寄せており、ギャグ漫画シーンの減っている2020年版だが、フレイムとブリザードの登場するシーンはコント的に笑いをそっと入れているようで、これもまた一興。

というわけで次回には、マトリフとポップの初修行が描かれるはずだ。ポップの大魔道士への第一歩を楽しみにしよう!

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