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「世界は遊び場」だと思っている人の旅の話

昨日は、同僚に誘われてランチ。私は3年ほど前に彼が入社した時の面接官の一人で、それ以来ワカメは「面接を通してくれた人」として認知されているらしく、半年に一回くらいキャッチアップしている。入社直後に、「次の3年で何を達成したいですか?」と聞いた私に「エベレストにのぼりたいんです」と言ったのは彼が初めてで、外資系テックの給料の良さを、自分の夢の実現にダイレクトに使おうとしている青年だ。同時に、おばあちゃんの老人ホームの費用も毎月20万円以上支払っているというので私は彼を尊敬している。尊敬の理由はそれだけじゃ無いけど。今回は彼が最近行った、モンゴル旅行の話を聞く。

ノマド、という言葉は東京でも「ノマドワーカー」とフリーで場所を固定せずに働く人の説明でよく使われるようになったけど、そもそもはモンゴルなどの遊牧民だ。彼とその友人男性は、モンゴルの遊牧民が多くすむエリアまでバイクで出かけていって、ゲルとと呼ばれるテントの扉をたたき、「今夜泊めてもらえませんか」と頼んだという。そして、滞在中の7日間の間、毎晩違うゲルの主人に尋ねたけど、一回も、(そう、一回も!!)誰にも断れなかったらしい。

受け入れられた後は、馬のお乳と、羊肉をいただくという。馬のお乳は酸っぱくて腐敗臭がして、羊は頭がついていてグロテスク。本当を言えば反応してしまいそうになるのを、ぐっと堪えて出されたものは全部食べる。そうやって次の日の宿に向けての信頼を積み上げるのだと思う。彼にはそういうところがある。細かい反応を示さないから漂う安定感。

毎晩知らないひとのテントに泊めてもらう話について、私は彼のことをもう3年も知っているのでそんなに驚かなかった。でも二人で話し合って、彼の個性の本質は「断られることに対しての恐怖が限りなくゼロ」という分析に至った。

彼は例えばクラブに行って可愛い子を見つけた時、あるいは友人が「あの子いいと思う」と言った時に迷いなく彼らに近づいていって口説くことができるタイプだし、実際そういう動き方をするらしい。もしかすると打率は凡庸かもしれないけど、バッターボックスに立つ頻度が普通の人の10倍くらいなので、うまくいく回数は圧倒的に多い。もちろん振られてる数も人より多いのだけど、私たちが働いている環境の、外資テック的価値観ではそんなの誰も注目していない。だから、仕事でもそうやって着々と実績を積み上げて生きている。

嗚呼。この世界を生きるのに、断られる恐怖と戦っていたり、あるいはそれを認められない人が大多数の中での、この個性!!!なんだか腹が立ってきて「君にできないことは何なのさ?」と聞いたら、エクセルを使ったデータ分析は苦手、とのこと。そんなもんできる人いくらでもいるから全く問題にならないぞ。

何だか悔しくなって「世界は君にとってどんな場所?」と尋ねると、「The world is my playground(世界は遊び場でしょう)」と笑う。大変失礼ながら彼より頭が良い人はいっぱいいるし、物事をあまり深く考えて進める人もたくさんいるだろうけど、彼の見立てほど人生を幸せにするものはなかなかないなあ、と思って羨ましくなった!

あなたにとって、世界はどんな場所ですか?

年末にかけて、この世は遊び場、と私も思いながら毎日暮らしたい。


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