モテたければ、まるでお絵描きを手伝うかのように、相手の話を聞くといい。
私もまさにその一人なのだけど、この世は誰かに話を聞いてもらいたい人がいっぱいいる。それはきっと、恥ずかしがるほどのものでもなくて、人間の自然な願いみたいなもの。「ねえねえ聞いて」、と小さいこどもが言うのが普通なのと同じ。大人になると表面上はおさまるし、承認欲求の強弱でグラデーションはあるのだろうけど、本質が変わるとは思えない。
体感だと、自分のことを話したい5人に対して、聞きたい人なんてひとりいるかいないかだと思う。もちろん、私達はその時々でお互いに聞き役に回ったり、話し役に回ったりするので、役割は固定的なものではない。でも、世界には圧倒的に聞き役が足りていない。だからどうしても、権力がある人やお金を払う人が自ずと「話を聞いてもらえる席」に長い時間座ることになる。飲み会で独演会を展開する部長や、ジャイアンコンサート、などなど。誰しも、「早く終わらないかな」と思ったことはあるはずだ。
だから逆に、普段は十分に聞いてもらえていない人の話を聞いてあげるすごく喜ばれる。さらに、彼らが本当は話したいことを引き出してあげたらもっといい。本人がどんどん話せる状態を手伝ってあげるだけで、勝手に親近感をおぼえて、また会いたいと思われるはず。
私もお友達と食事をする時、乾杯の後にすぐ「ワカメちゃん、今日はどんな1日だったの?」と聞いてもらうとすごく嬉しい。大したことがない日だったとしても、こんなことをして、あそこに行って、あの人と会って、こう思ったんだよ、と最初に話をさせてもらえると、満足してそのあとの相手の話に集中できる。
普通に頷きながら話を聞くだけでもすでに意味はあるのだけど、ここではプラスワン。これはこないだプロのコミュニケーションコーチから聞き齧った話の受け売りで、「相手が絵を描くのを手伝うかのように、話を聞く」のがコツらしい。
たとえばあなたとA子ちゃんとの会話。
あなた:「A子ちゃん、お昼は何食べたの?」
A子:「りんごだよ」
あなた:「へえ、何りんご?」
A子:「青リンゴだよ」
あなた:「A子ちゃんは果物が好きなの?」
A子:「そう、秋田の出身だからね」
あなた:「そうなんだ。実家はどんな感じ?」
A子:「実家は兼業農家で喫茶店をやっていてね、両親と弟がいるの。何もない、クソ田舎なんだけど」
あなた:「へえ。A子ちゃんはそこで看板娘をやっていたの?」
A子:「そうね、小学校から帰るといつもお店を手伝ってた。そういえば言われて思い出したんだけど、お店にいつも通ってくるお爺さんがいてね」
あなた:「うんうん。それで」
A子:「ずっと可愛がってもらってたんだけど、ある日家にきたナマハゲがそのお爺さんだって気がついちゃったの!」
あなた:「あれま、びっくりだね。それでどう思ったの?」
A子:「今思えばバカバカしいんだけど、お店にナマハゲが来るって思ったら怖くなって、もうお店には私、いけなくなっちゃたの」
あなた:「え?それがきっかけでA子ちゃんは東京に出てくることにしたの?」
A子:「関係は、あったかもね。でも東京に出てきた直接のきっかけは当時付き合ってた彼氏でね」
あなた:「うんうん、青森の彼氏。どんな人?」
A子:「バイク乗りで。でもある日葡萄畑にバイクで突っ込んじゃって。田舎だとみんな知ってるからいづらくなって一緒に東京に出ることにしたの」
あなた:「フルーツに戻ってきたね、りんごと葡萄。」
この話の中身は支離滅裂だけど、相手の頭の中にあるものを少しずつ引き出してあげて絵を描いていくお手伝いをするイメージで話を聞いていくと、話し手も忘れていたようなディテールや繋がりが見えてくるから、どんどん話しやすくなって喜ぶよ、と言うお話。
これのいいところは、聞き手は面白い話なんて用意する必要はないし、基本的には素直な好奇心に沿って以下を繰り返すだけでいいこと。
「それでどうなったの?」時間を前に進める
「その時、どう思った?」本人の感情をふかぼる
「それってどんな感じなの?」情報の解像度をあげる
ほとんどの人がやってしまっているのは、話をきいているつもりが、相手の話を奪うことだ。
あなた:「お昼にりんご食べたの?りんご、うまいよねー。そういえばふるさと納税でこないだ青森県から取寄たら美味しくって、すごく良かったよ」
A子ちゃん:「あ、そうなんだー。すごーい」(心の声:りんごは本当は秋田が美味しいのに、面倒だから黙っておこうっと)
一緒にお絵描きモードで、話を聞いてみよう。
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