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脱衣所ワークショップ0回目

1月23日に「銭湯が、誰かの生きづらさが軽くなる場所であるように」という記事をnoteに投稿しました。思いついたアイデアをただただ書き綴ったに過ぎませんでしたが、その後、思いに共感くださった方々からご連絡をいただきました。ご自身の体験からこの企画に賛同くださった方、銭湯好きだからこそ何かやりたいと思った方、女性向けの雑貨品を作る中で"女性向け"に疑問を抱かれた方、本当に様々でしたが、皆さん強い意志と情熱をもたれていることをメールから感じられました。

最初は、皆さんのアイデアを受け取った上で、脱衣所で何をするかを考えていくのがいいかなと考えておりましたが、考えを進めるうちに私が決めるようにはしてはダメだと思いました。こんなにも様々な思いを持った方がいるのに、最終的に私が判断をしては、私の生きづらさが解消するような場所になってしまうと思ったのです。また、脱衣所の今後を考えることが、皆さんが自らと向き合う機会になると感じ、私一人で進めるのではなく、お声がけ頂いた皆さんを集めてのワークショップを開くことにしました。

2020年2月13日。定休日の小杉湯に13人の方がお集まりくださいました。今回声をかけたのは、小杉湯と銭湯ぐらしメンバーの有志、noteをみて声をかけてくださった方、参加者さんが呼びたいと思う方たちを集めていただきました。初めてお会いする人もいたので、最初はアイスブレイクも兼ねて、自己紹介と共にこんな質問を投げかけました。

「生理のとき、お風呂や銭湯はどうしていますか?」

これはずっと聞きたかった質問。でも、なかなか聞けなかった質問でもあります。答えは千差万別でした。生理の時は銭湯には絶対行かないという方。むしろ、生理の時は割り切って家風呂を楽しんで、生理が終わったら「禊」として銭湯をたっぷり楽しむ方。反対に、血の量が少なかったら銭湯に行く方もいました。その時はタンポンを入れて、紐の部分が見えないように腰に布を巻いて隠したり、ヒモを足の付け根に肌色バンドエイドをつけて工夫する方も。また、ピルを飲んでいる方も数人いて、数ヶ月にいっぺんにしているから、その期間は銭湯は我慢できると仰っていました。また、その日はタンポンを作っている会社の方もお見えになって、タンポンは膣の奥に入れるから、タンポンを入れたあとは膣の入り口は閉じて血は出にくい状態になるので、お風呂に入ってもお風呂の水を吸わないという話も伺いました。普段使いをしているのに、タンポンについて知っているようで知らないことも多く、改めて生理用品の情報共有機会の少なさを感じました。

その後、「生理の時銭湯に入るのはあり?なし?」と質問したところ、7割は”条件付きならあり”。お風呂に入る前にタンポンを取り換えること、経血が多い時期は避ける、タオルは自分の物を持ってくるなどの意見がありました。また、タンポンの紐問題はなかなか気になるもので、それに寛容な社会であったらいいよねという話も。そして、2割の方は"なし"。タンポンをしていても経血が漏れそうで怖い、しっかりしたエビデンスがない限りは血が出る状態で入るのはよくないなど。その意見に対しても、ありの方もなしの方もしっかり意見を受け止めて、タンポンの性能を考えたり、そもそもの使い方のルールを決めたり、など対策をみんなで話し合いました。

場も盛り上がったところで次の話題。

「女湯がどうあってほしいですか?」

女湯が今後こうなったら生きづらさが減るよね、さらに楽しくなるよね、という質問をしてみました。こちらはグループに分かれて頂いて、付箋でアイデアを出してそれぞれ発表していただきました。

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こちらのチームは4つのアイデアに分かれました。
①銭湯でできるサービス
パンティライナーの常設や、生理後の方へのドリンクサービス
②店頭で手に取りにくい物の展示
月経カップなどの生理用品、生理中向けのランジェリー、女性向けのセルフプレジャーアイテムなど
③健康相談の場
おりもの色合いや小さな不調を相談できる掲示板、肌年齢を測れるサービス、乳がんをチェックできる模型の設置
④性にまつわる活動の啓蒙
トランスジェンダーの方の周知、乳がんなどの手術跡をタトゥーで隠せるように脱衣所やとなりにタトゥーサービスを開設、様々な活動を周知する新聞を浴室に設置する

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このチームは主に”みんな”と"個人"の場の二軸から提案を行いました。
①”みんな”:情報をシェアする場
病院手前の不調を相談できる場、近所の信頼できる婦人科や病院の情報、同じ性別の違う年代の人と情報をシェアする、手術跡をポジティブにしたい
②"個人":キレイであることを楽しむ場
デート前に銭湯へ行けるような化粧品のレンタル、パーソナルトレーナーやストレッチなどの実施、ほっといてくれるけど一人じゃない空間

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最後のチームは「当たり前をほぐす」をキーワードにしていました。
・乳がん検診の実施
・生理の話
・たのしい性教育の話(例えば、今までお母さんと一緒に女湯に入っていた男の子が、あるときから男湯に入るように言われる理由など)
・肉体的な性別と、精神的な性別について
・自分とは違う考えの人と話せる場

具体的な部分から抽象的な概念の部分まで、こうあったらいいなが共有できました。私がここでぐっときたのが「当たり前をほぐす」。生理や女性ならではの体のことだけでなく、男女の違いや、ジェンダーギャップなど、この言葉は色んなことに共通するし、ほぐすという表現は銭湯らしくてスッと胸のうちに入ってきました。もしかしたら、この言葉が企画名にふさわしいのかも。

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こうあったらいいなを話したところで、今度はみんなで車座になって「私が今後やってみたいこと」をざっくばらんに話していきました。色んな話があったので箇条書きにまとめます。

・性教育について取り組んでみたい。近年、梅毒が流行っているので注意喚起。女性だけでなく男性にも周知できる方法を考えてみたい。その上で、近くにある婦人科の病院など紹介していきたい。
・浴室はスマホを持っていけないので、浴室の壁に掲示物をはると、みんなゆっくり眺めていく。深く届く発信ができるのでは
・職場のセクハラやパワハラの情報を伝えたい。自分では大丈夫だと思っても、本当はセクハラやパワハラの類の物もある。こういう時は怒っていい、公的な機関に行った方がいいなどの情報を伝えていきたい。
・男性も女性に聞きたいことがあると思う。例えば、目安箱のような物を設けて、そこに男性からの質問状を入れてもらう。「生理中の女性の接し方」から、「好きな人へのプレゼント」まで幅広い質問があると嬉しい。その質問を女湯に掲示し、気になった人が書き加えていくシステム。裸の交換日記として、やってみたい。
・月経カップの使い方講座や、生理にまつわるセミナーなども行っていきたい

最初は緊張した雰囲気があったものの、ここではみんな表情もほぐれ、これがやりたい!あれがやりたい!と意見がどんどん出てきました。19:30から始めたワークショップも気づけば22時。あまりに白熱したため、みんなこんなに時間が立っていたとはと驚いていました。今回のワークショップの最後に、みなさんに感想を聞いてみました。「初めてあった人とも、こんなに深く自分のことを話せるなんてとても嬉しい」「ここは安心安全の場。胸のうちを話せるのが、すごくよかった」「ここで集まった人たちは、関わりたいという思いが強い人。肝心なのは、この試みを関心をまだ持っていない人にも届けること。その意識で進めていきたい」「浴室に情報を発信しすぎては、銭湯の緩やかさが失われてしまうかもしれない。銭湯らしさを損ねないように意識しつつ、発信できる方法を考えたい」
みなさん、この場について深く考えてくださったことが私にとって何よりうれしかったです。今回、このワークショップを開いてよかったと思うのは、安心安全の場を作れたこと。初めて会う人たちだけれども、この場所でならプライベートな話をしても大丈夫。そんな場所を、私だけでなくみんなが求めていたのかもしれません。

今後、この試みをどのように続けていくかはまだまだ模索中です。ですが、この安心安全の場を続けていくこと、またこの試みを発信し続けていくことが何より大事ではないかと考えています。形になるのはもう少し先かもしれませんが、まずは話し合いを続け、「当たり前をほぐすこと」を大事にしていきたいです。



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