鳥が鳴く春

ねむる時間の向こう側でまだ寝ててもいいよとささやきながら
駅の裏に打ち寄せる波になろうとして風を待った
それから終りのないプラットホームでわたしたちになかった空を見上げた
別れの場所を忘れるなと鳴く鳥が舞い
しかし忘れるだろうと別の鳥が鳴き返す空の真下には
通りすぎるといっしゅんで見失ってしまう風のような波になって触れたいひとがいた

夕陽がこの春を越えない花々を散らしている
わたしたちに帰ってくるものを信じてはならない
わたしたちに残されるものを信じてはならない
後ろ姿のない別れの場所を忘れるなと鳴く鳥が舞っていても
その鳥を信じてはならない

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