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キンちゃんがUFOの写真を撮ったんだってさ【 エッセイ 】

「 その飛行物体の正体は…… 」



小学校2年生の時だった。

仲良しのキンちゃんが、一枚の写真を手に訪ねてきた。

その写真に写っている飛行機を人差し指でトントンとさしながら、興奮気味に言った。

「 ユーフォーの写真とった…… 」

―― ん?

ユーフォーとは未確認飛行物体のことで、英語にするとアンノウンなんとかかんとかいうもので、ユーフォーはその頭文字のU.F.Oの事であり、もしかして宇宙人が乗っているかもしれないけれど、人が乗る飛行機ではもちろんないはず。

写真に写っているその物体は、横一直線に翼が伸び、その真ん中に上に向かって尾翼が立っている。

そう、ローマ字のTを逆さにして上の棒を短くした形。まぎれもなく遠くを飛ぶ飛行機の後ろ姿だ。

もしやキンちゃんは嘘をついているのだろうか? その横顔を凝視してみると、わたしの視線などお構いなしに、これを撮影した時の様子を熱く語っている。

「 おじさんの結婚式に行ってその駐車場から撮ったんだ 」

なかなか具体的な設定。どうやら嘘ではないらしい。

「 これから図書館にいって調べようと思うんだけど一緒に行こうよ 」

わたしはとっさに飛行機の図鑑を思いうかべた。

それを見たら写真に写っているものは飛行機だと分かるだろう。

どんな心境かは思い出せないが、わたしは「 図書館に行ってはならない 」そう思った。

苦し紛れに、「 いや、うちにある図鑑でいいんじゃない? 」と言った。

ユーフォー図鑑はないが、イースター島のモアイの写真が載っている本がある。当時、モアイは宇宙人が作ったという説が流れていた。おあつらえ向きだ!

「 モアイとユーフォーの謎がとけるかもしれないよ 」

キンちゃんはこの提案にのってきた。

二人で図鑑を覗き込んで、モアイ像の背景にある空に、ユーフォーが写っていないかと目をこらした。

これでキンちゃんの意識はモアイに向けられた。

やれやれと思ったその時だった。

「 これは! 」キンちゃんが叫んだ。

青い空に小さな黒い点がある。

印刷の過程でできたであろうその点の横に自分の撮った写真を並べ、キンちゃんは目を細めたり、大きく開いたり、睨んだりして見比べている。

そのうち、いてもたってもいられなくなり、虫メガネを借りるため、隣室にいるわたしの父のところにいき、虫メガネと一緒に父を連れて戻ってきた。

「 なになにユーフォーだって 」

「 おじさん、これです! 」熱のこもった声でキンちゃんが答えた。

「 これは飛行機だな 」そう言うと父は部屋を出て、数分後に一枚の写真を手に戻ってきた。

それは、キンちゃんの写真と同じ場所で撮られたものだった。引き出物をもっている礼服姿の親戚がいて、その後ろの空に、飛んでいく飛行機の後ろ姿がはっきりと写っていた。

「 これが飛んでいってこうなるんだよね 」

自分とキンちゃんの写真を並べてそういった。

同じ形の拡大と縮小。これを突きつけられては、あがきようがない。

キンちゃんは何も言わずに凍り付いた。

思わぬところから決定的な物証が登場してしまったものだ。

エージロー

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