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ゾロ目数字の秘密

Facebook 2020-08-3

クシシュトフ・キェシロフスキが生前完成することのできたトリコロール三部作の最後の作品『Rouge: 赤』の主人公(イレーヌ・ジャコブ演じる)ヴァレンティーヌは、毎朝の日課として1日をスタートする前に階下のカフェでおもちゃのスロットマシンを一度だけプレイする。スロットマシンは、ゾロ目になると褒美が出るのが普通で、特に世俗界においては「7」が三つ揃ったりすると、ことのほか目出度いこととされる。ところが、ヴァレンティーヌはゾロ目が出ることを忌む。良くないことが起こりそうな時、その予兆としてゾロ目が出るという演出を、キェシロフスキはさりげなく行なっている。

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このことは他の2作品(『Bleu』と『Blanc』)に関しても同様だが、このようなさりげない本筋と一見関係ないかに見える小さなエピソードや使われている小道具の中に、様々な秘教的な知識をまぶして映画を作ったのがキェシロフスキだった(キェシロフスキは「嘘つき」で、彼のインタビューの中で「私は象徴の映画を撮らない」とわざわざ断っているが、それは全く逆で「私は象徴の映画しか撮らない」という意味の目配せを判る人に送っているのである)。主人公の乗っている車の車種やクリスマスの飾りなど、さりげなくカメラが画面の隅に捉えているものなどの中に、極めて重要な暗示が行われているのだ。

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さて、3つの数が揃うことを悪い予兆と捉えるヴァレンティーヌには、そのゾロ目以降、徐々に悪いことが起こっていくのだが、それは最終的には彼女(とその後結ばれる縁の中にいる男)にしか起きないある大団円を用意するための仕掛けであることが分かるのであるが、このゾロ目が縁起が悪いという認知が非常に古い歴史を持っていそうなことが紀元前5世紀の人、ヘロドトスの『歴史』を読んでいて見つけた(もっとも大事なのはその訳註なのであるが)。

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これはかなり重要なポイントなので、ここで詳述はしないが備忘録としてここに残しておく。

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