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アサヤンVol.8 近田春夫の電撃的東京

秋元康が一番尊敬する人物とは?

 平成から令和に掛けて、稀代のヒットメーカーと言えば「秋元康」さんだろう。昭和の歌姫・美空ひばりさんに「川の流れのように」の歌詞を提供。他にも小泉今日子、とんねるず、AKB48など、作詞からプロデュースをまでを手掛け、「天才とは多作なり!」を地で行く人であることは承知の通りだろう。

 そんな秋元康さんが「一番、尊敬する人物」をあなたはご存知だろうか?その人物こそ、今回の「アサヤン」のゲストでもある近田春夫さんだ。
 まずは、こちらのBS-TBS「流行歌の100年 未来に残すべきニッポンの歌」の冒頭1分程度を確認していただきたい。

 さらに、29’16”の近田さんが「歌謡曲で一番いい曲の話」における秋元さんと近田さんのくだりをご覧いただきたい。

 私も放送作家の端くれにいるので、秋元康さんの「島倉千代子さんの『人生、いろいろ』っていいよね」の感覚はとてもよく分かる。その中で「無情の夢」をチョイスする近田さんの振る舞いを絶賛している。テレビは、最大公約数であることを求められるメディアだが、その中において「共感」などは一切、求めない姿勢に秋元さんは感嘆している。それは別の角度で捉えれば「予定調和が一切ない」とも言えないだろうか。

 放送作家として生きてると、テレビ番組、芸人のネタ、ビジネスしかり、その中身を分析し、構造の仕組み、方程式を探りたくなるのは性と言っていい。近田さんの凄さは、一度はその仕組みを探究をするのだが、見極めた後にすぐ放棄してしまう、凄さを感じるのだ。

考えるヒットの近田春夫

 今、私はアラフィフに差し掛かる年齢だが、実はテレビで活躍する近田さんの姿を現役では見ていない。政治家言えば、田中角栄であり、プロ野球で言えば、それこそ長嶋茂雄さんや稲尾和久さんにおいても現役バリバリの姿を私の年齢だと、聞き伝えでしか知らない。(今の若い人に、元気が出るテレビやお笑いウルトラクイズの存在を言うようなものだろう。)

 そんな私にとっての近田春夫さんと言えば、1990年代の後半に連載されていた週刊文春の連載コラム「考えるヒット」だ。小林秀雄さんの「考えるヒント」をもじって名付けられた当連載は、テレビ番組であれば「ナンシー関」、音楽であれば「近田春夫」というエンタメ批評の絶大な指標であっただろう。その文体やアプローチは全く異なるが、通底しているものが「なんとなく、うっすら感じているものを言語化する能力」だったと思う。さらに近田さんの文章には「絶対音感」ならぬ「絶対音楽観」みたいなものがあった。「なんでこんな時代錯誤な~」「ジャケットと音のバランスが~」と言われてみると、確かにそんな感じを抱かせてしまう、圧倒的な説得力があった。その背景を探れば、恐らく近田さんの絶対的な「音楽知」がなければ、書けない文章だと私は勝手に思っている。

 秋元さんがそうだったように、水道橋博士にとっても、青春時代のリアルスターであり、憧れの存在であった近田さんを迎えたのが今回のアサヤンだ。奇しくも自伝「調子悪くてあたりまえ」を出版したばかり。現役の凄さを知らない私にも、近田春夫さんの凄さを体感できるチャンスが訪れたと言っていいだろう。

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ライブ前、スマホ紛失でテンション、ダダ下がり「調子悪くてあたりまえ」

 さて、今回のアサヤンは自伝「調子悪くてあたりまえ」に記された数々のエピソードに迫り、近田春夫さんの魅力を解剖する回となった。ライブ前の私の印象で言えば、その音楽性やスタンスがどうにも、捉えることが出来ずにいた。なので、今回の配信ライブを通じて偉大なる近田さんの本質がきっと、分かるはずだ!とそう睨んでいた。

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秘蔵映像が続々と。上段下手より、総合司会「ジョニー小野」元浅チーフD「高須信行」下段下手、大病から回復「近田春夫」、憧れの人を前に「水道橋博士」

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ゲストにはダースレイダー。
余命一年。たまに治療室行っとかないと。「調子悪くてあたりまえ」

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上段上手より、「芸人たるもの尖ってるのあたりまえ」エルカブキ・エル上田、と「今日も、スベってもあたりまえ」無法松

マジメなやつ、つまんないじゃん!

ライブ開始、博士との近田さんとの逸話から「芸能界を袖から見る話」で盛り上がる。さらに近田さんの慶応幼稚舎時代(幼稚舎と書くが小学校時代の話)のエピソードが披露される。
 ・小学校ですでに俯瞰的なものの見方を知る。
 ・父親の予言が次々に当たる人話。
 (「テレビは関西のモノになる。」「サッカーが来る。」
  こぼれ話で、ダースさんの「サッカーボールを韓国から、輸入したのはカズ(三浦知良)さんの父親なんですよ。相当、いい加減なものだったんですよ(笑)」
 ・慶応義塾幼稚舎との関係性話。
(近田「付き合いはなかったのよ。マジメだから(笑)  
    つまんないじゃん。」)

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何度も作り直したスタッフ・原田専門家の力作「やり直すのあたりまえ」

ロックンローラーの近田春夫の言葉を聴け!

 幼少期から近田さんの特殊な環境が明かされる中、時折、事件が起きる。それは、、、入念に下調べした博士のエピソードを近田さんが否定し始めるのだ。
博士「畳の上に一回も暮らしたことがないって・・・」
近田「最初の頃は(畳の上で生活したことも)あったんですけど、
それ(本に書いてある中身)、言葉の勢いでそうなっただけ。」(爆笑)
博士「ここは聖典ですから、否定しないでください。」


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資料と違うよ!「予定通りじゃないのはあたりまえ」

 この時、自伝とは正確な事実である必要なく、自己都合でいいのだと思い出させてくれる。そして次第に、近田さんをカテゴライズしたり、規定することに意味はないと分かる。なぜなら近田さんは、「ロックンローラー」であるがゆえに、常に形を変え、近田さんを枠にはめ込む行為が無駄だと気づき始めた。

 さあ、若いミュージシャン、お笑い芸人、クリエイターでの成功を目指す者達よ!近田さんのマネするかどうか別として、その類まれなる異才の言魂に触れない奴はバカだ!ということは断言しておこう。竹原ピストル風に言えば「よー、そこの若いの。俺の言うことを聞いてくれ。『俺を含め、誰の言うことも聞くなよ』」と。

近田春夫のクリエイターたる「至言の数々」

 今回の配信ライブは、クリエイターたるものの、学ぶべき姿勢や至言が詰まっている。その一部を紹介しよう。

「理屈抜きで、理屈好き」
「舞台袖で見るために芸能をやってるんだぜ」
「言っちゃったことは言っちゃったこと。(中略)責任は負わないけど」
「マジメにふざけろ!って嫌なのよ。ふざけるってことはマジメじゃないのよ。鉄の意志でふざけろ!」
「ゲイバーのショータイムがパクリ元」
「若い子たちさ、未だにLL・クール・Jと同じことやってんじゃん」
「俺のことをみんなにマネしてもらいたいってモノを作る意識を持て」
「日本(音楽)は、射精をしたい」

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LL・クール・Jのマネ、バカじゃないの?

内田裕也伝説&芸能界の秘話

 さらに特筆すべきはやはり「内田裕也」伝説の数々だろう。
・内田裕也一家の一員である話
 「はっぴいえんど派?内田裕也派か?」
・裕也さんから離れたいためにバンドを組む話
・矢沢永吉(キャロル)に圧倒された話。
・GS時代の「音楽的才能とファイト(ケンカ)才能」話
 など、どれもが珠玉の逸話が満載だった。。。

「アカデミックなものより、非アカデミックなものがカッコいい」

 ライブ終盤にひと際、盛り上がったテーマが、、、ダンス、お笑い、ヒップホップにおける「スクール化」話であった。「学校行ってさ、先生に教わってさ、不良っぽい恰好する」そんな時代へのアンチテーゼが炸裂する。
 その上でのダースレイダーさんの「YOU THE ROCK★のヒップホップ学校の校長話」に爆笑させられる。終わってみれば、クリエイター足るもの必見の回となったであろう。予定調和をぶっ壊す今回のアサヤン、その全貌を見て欲しい!!

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最後に、今日は僕の誕生日です!「自己申告は、あたりまえ」度胸抜群の無法松

視聴期限: 2021年6月1日(火) 23:59 まで。全部、見れるのは今だけ!!配信チケットはこちらから!

さらに次回はこちら!

 写真提供:利根川亘・中山友美
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 執筆者:島津秀泰(放送作家)
 Twitter:@shimazujaoriya
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