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アサヤンVol.10「口伝・明石家さんまヒストリー(エムカク)」

怪人たちが集う「アサヤン」

 配信第10回を数えることとなった「阿佐ヶ谷ヤング洋品店」こと「アサヤン」であるが、回を重ねるごとにある種の奇妙な感覚に捉われている。そのゲストの顔ぶれを一部、ご紹介すると「泰葉」「ちんこ(よしおつねお)」「前田日明」「井上咲楽」「グレート義太夫」「寺門ジモン」「近田春夫」「西野亮廣」etc.(敬称略)

 「濃厚」という言葉では、物足りない圧倒的な個性のパワーを毎回、感じていた。これは何なのか?実は、、、私はアメコミのBATMANに出てくる「ゴッサムシティ」の住人を見ているのではないか?そんな結論にたどり着いている。というのも、今回のゲスト、明石家さんまの愛好家・エムカクさんの写真を見た時、ピンと来たのだ。(名前とその活動しか存知あげてなかった。)

「これはリドラーが来た!!」

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  なぞなぞ好きのエドワード二グマから、知能犯「リドラー」へ

 リドラーをご存知でない方に簡単に説明すれば、「バットマン」誕生前の腐敗した町を描いた作品、アメリカのドラマシリーズに「GOTHAM/ゴッサム」がある。(最強の敵には、ジョーカーもいる。)その中で、犯罪の計画に謎やパズルを組み込み、知能犯として登場するのがリドラーなのだが、、、エムカクさんと並べてみると、、、

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アサヤンに現れた「リドラー」こと「エムカク」さん

 ご本人が失礼と感じたら申し訳ないが私はピンと来た。「アサヤンは毎回、ゴッサムに出てくる怪人たちを見ている場ではないのか?」井上咲楽ちゃんは「さすがに違うでしょ?」とおっしゃる方もいるかもしれないが、「鼻からミミズを食べる男」佐々木孫悟空さんが出てくる「昆虫大戦争」における咲楽ちゃんの「異常な昆虫愛」を見れば、また、それが怪人の持つ特殊能力にも思えてきた。

 さしづめ、水道橋博士は、「怪人たちを生む、狂気の科学者ストレンジ博士」ということになるが、まさにエムカク誕生を後押し、いや、作り上げたのは他でもない水道橋博士である。

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「怪人を生み出す」アサヤンのストレンジ博士、水道橋博士

 ライブの配信前、博士に「前からエムカクさんのことは知っていたんですか?」と尋ねると「僕の周りにはいろんな芸人の年表を作ってる人がいるから、詳しい人いるんだけど、その中でさ『さんまさんに詳しい、とんでもないモンスターが大阪にいる。』っていう噂は聞いてたのよ。Twitterもあるんだけど、家族とか、影武者じゃないかって。だってそれぐらい詳しいんだもん。」そんな二つの星が急接近したのは、2013年、TSUTAYA梅田堂山店にで開催された博士の「藝人春秋」でのサイン会であった。そこで博士は自らの年表を渡したところ、Twitterで「僕はこの年表を参考にして、明石家さんま年表を作りたいと思います。」とやりとりをきっかけに、博士が編集長を務める「メルマ旬報」へ執筆陣の一員として加わることになる。その後、連載をまとめた本がこちらだ。

超絶早口のさんまの言葉を拾う男・エムカク

 また、これまでの実績を買われ、「誰も知らない明石家さんま」(日本テレビ)のスタッフの一人としても参加している。これは企画立案者に聞かなければ、分からないが私が推測する限り、「メルマ旬報」での執筆が企画立案のベースにそもそもあるではないか?と睨んでいる。(ちなみに連載スタートは2013年9月。最初の特番が組まれたのは2015年11月である。)

 ライブ本番前、直接、ご本人と話す機会があり、「ライターをやる前は何の仕事をしていたのですか?」と尋ねた所、「肉体労働をやってました。」と教えてくださった。その答えはまさに、なぞなぞ好きのエドワード二グマが知能犯「リドラー」として、世に出てきたのではないか。と奇妙な興奮を覚えた。しかし、本当の怪人ぶりはこんなものではない。

 私自身、放送作家の仕事をしているので、昔から「世界まる見えテレビ特捜部」のナレーションの文字起こしや「人志松本のすべらない話」の文字起こしをして、その構成術を研究してきた。実はこの作業が結構、骨が折れるのだ。たかが5分、10分のしゃべり・VTRでも一言一句文字起こしをしようとすると、2,3時間は平気で掛かってしまう地味な作業だ。
 で、エムカクさんは明石家さんまさんの全出演番組の(ラジオを含む)のしゃべりを全部、一言一句文字起こしをしているのだ。
 考えてもみて欲しい、あの超絶早口の明石家さんまさんのしゃべりを一言一句もらさずに「文字起こし」することの尋常さたるや。たった、一本の「さんま御殿」の文字起こしをするだけでどれだけの時間を使うのか?これは通常の人間ならば、頭が狂いそうな作業ではないか!!!

 ドストエフスキーの「死の家の記録」において、「半日かけて堀った穴を、半日かけて埋める。それを繰り返す。」この「無意味な労働」こそが、人生の究極の拷問であるという内容がある。この文字起こしの作業、ADの仕事ならば、「テロップを入れる」ための大事な役割であり、れっきとした仕事だ。しかし、エムカクさんの行動は、給料が発生するわけでもなく、一見「無意味な労働」に見えなくもない。もちろん、本人にそんな思いは全くないだろう。とはいえ、博士に見いだされなければ、「特異な趣味」で終わっていた可能性も否定は出来ない。

 では何が、自らの人生を捧げるまでに「明石家さんま」さんに取り憑かれたのか?それは1996年3月23日「MBS ヤングタウン」でのさんまさんの一言だった。

「言っときましょう。私は、しゃべる商売なんですよ。本を売る商売じゃないんですよ。しゃべって伝えられる間はできる限りしゃべりたい。本で自分の気持ちを訴えるほど、俺はヤワじゃない。 (by 明石家さんま)

 元々、さんまさんの熱烈なファンであったエムカクさんだが、この言葉に感銘を受け、「忘れたくないために」さんまさんの言葉をしたため続けることを決意する。それはまさに「さんまさんという神の言葉をしたためるペテロパウロ」のようなものではないか。そこには「金儲けのため」とかそんな思いは微塵もない。そもそも「労働」ではない。あくまで自分を夢中にしてくれるさんまさんへの愛や人生の糧として活動をスタートさせているのだ。当初はノートでしたため、その冊数は120冊(現在はPCで管理)にも及ぶという。

 そして先ほど、「怪人を生み出す水道橋博士」と記したが、実は博士自身、若かりし頃、「ビートたけしのオールナイトニッポン」において、たけしさんの言葉を一言一句ノートにしたためていた話は有名である。そう、二人の接点は偶然ではない、ある種の星が導いた必然の結果にも見える。「違う宗教でありながら、教祖を見守り続けた二人」でもある。だからこそ、今回のアサヤンは凄い!

 あまり、こういうことを言うべきではないかもしれないが、世の中にある高級品とは職人が手間暇かけて、作るから高い値段が付く。そこには膨大な時間というコストが掛かっている。今回、エムカクさんの何十年にも渡って積み重ねてきたものを今、我々は一瞬で消費しようとしている贅沢さ、貴重さを噛みしめていただきたい。(それがたった、1500円なのだから。)いつものことだが、前フリが長くなった。

職業上の理由でお答え出来ません

 さんまさんが大好きと言う「甲斐バンド」の曲と共にライブがスタート。
冒頭、高須Dとさんまさんとエピソードが披露される。「さんまさんはJリーグどこが好きですか?」に対し、さんまさんは「俺なあ、どっかのチームを好きって言ったら影響力あんねん。」と。博士「ちょっと天皇に近い感覚ありますよね。」と返す。これは昭和天皇が天覧相撲の際に記者に「好きな力士はいますか?」との質問に対し「職業上の理由でお答え出来ません。」をなぞらえてのことだが、まさに「職業・明石家さんま」を垣間見る話であった。

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「ホント、カメラ回ってなくてもあのまんまで感動。」高須D

 さあ、今回の見どころだが、ひとつは「執筆にまつわるエピソード」だろう。共演者との年表話や出版依頼の話など、驚きの話が次々と披露される。  また、エムカクさんが持参したさんまさんにまつわる秘蔵映像、資料の数々は必見だ。さんまさんが通った校舎から始まり、さらには高校時代のサッカーの引退試合のスコアにまつわる話(新聞社に裏どりをしていく話)やブレイク前夜の話など。まるで、警察の「事件の捜査会議」に参加するような感覚に捉われた。ややもするも普通の校舎や飲食店なのだが、「さんまさんが・・・」という主語が付くだけで特別の輝きを放ちそれが重要証拠のように我々は食いついた。いわば、「航空における飛行機が映っている映像」のはずが「ハイジャック犯、立てこもり中」というテロップ1枚入るだけで特別な映像見えるように、普通じゃない映像に見えるのだ。何より、数少ない下積み時代のエピソードは、「売れる前から輝いていた。」と感じさせる一方、「漫才ブーム」のピン時代の話は芸人ならずとも痺れる話だ。今の芸人が「第7世代に押されるー」とか言ってる場合ではないのだ。

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 何気に勉強家・エルカブキ・エル上田

特筆すべき、秘蔵映像は、、、

①浅草キッドとの初絡みシーン
②小林繁投手の前で形態模写をするさんまさん。
③芸能人運動大会でリレー対決「明石家さんまVS田原俊彦」
 当時アイドルで人気絶頂の田原俊彦さんとの競争。これは当時、アイドルに芸人が勝つことなど許されない時代の貴重過ぎるワンシーンだ。「その時、歴史は動いた!」と言いたくなるようなシーンは、結果を知っていても、この感動は活字では伝えきれない。
④「笑っていいとも」以前、島田紳助さんとのフリートーク
⑤テレビ東京深夜高視聴率を取りすぎて打ち切りになった
 「サタデーナイトショー」
⑥「笑っていいとも」でタモリさんが嫌いと公言していた小田和正さんを呼ぶ回。まさにお宝映像が満載である。

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「スベったら、『僕がから騒ぎ』でした、は絶対言いますよ!」仕込み人の無法松

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 子どもの頃に見た「オレたちひょうきん族」。すでにスターだったさんまさん。テレビにいるのが「普通」だったさんまさん。しかし、一たびテレビの作り手の世界を知ればそれがどれだけ異様なことか。今回、エムカクさんのエピソードと共に、「明石家さんま」がスター以前の話を聞けるのは本当に貴重であった。テレビは本来、打ち上げ花火であり、映画や本と違い残るものではない。しかし、YouTubeやそれこそ、エムカクさんのような人物がいることで、さんまさんは100年後の人間も笑わせているのではないかと思う。

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 さあ、次回の怪人は・・・「AV男優・しみけん」である。これまでの女性経験人数1万人。また、新たな怪人が来るよ。。。配信チケット販売中!いかにして彼はAV男優のトップに上り詰めたのか?そこにある思考は、AV好きならずとも参考になるはず。たぶん、いや、きっと。。。

写真提供:入江寛人 利根川亘
     Instagram:tomomi.photography
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 私は怪人には程遠いですが、怪犬(MC)となって世界と勝負しております。 6月5日(土)より配信スタートしてます!ぜひ、ご登録を!!

執筆者:島津秀泰(放送作家)
     Twitter:@shimazujaoriya
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