血液一滴で癌の診断ができる??本当にいいのでしょうか?その検査。

いまだに日本人の死因の第一位は「がん」です。(1)

癌について血液一滴で癌だとわかるという検査があれば、これはすごくいい検査だと思いますよね?

実際、どうなのかということをちょっと考えてみましょう。

血液一滴で癌の診断をする、、その実際の精度で考えてみる

たとえば、癌の患者さんの85%が陽性、健康な患者さんの85%は陰性となる検査だとしましょう。

これ、実際に市販されているもののカタログと同じ精度です。

結構よさそうですよね?

実際の癌の罹患率は10万人あたりで、男性917.3、女性657.5です。

おおざっぱに10万人に1000人としましょう。

そうすると、下の図のようになります。

感度特異度

本当に癌の方が1000人、そのうち850人が陽性です。

逆に癌でない方が99000人、そのうち84150人が陰性です。

そうすると、、どうでしょう。

陽性の方が15700人(15.7%)いますが、そのうち本当に癌の方は850人です。

陽性が出ても癌の割合はわずかに5.4%

つまり、陽性の人のうち、本当に癌である割合は5.4%ですね。

850人の方は検査をすることで癌が見つかります。

一方、残りの14850人の方も、もちろん癌があるかもしれないということで様々な検査を受けることになります。

胃カメラ、大腸ファイバー、PET-CTなど様々な検査を受けますが、癌は見つかりません。

「癌の疑い」のままです。

こういうケースを偽陽性といいますが、偽陽性はかなり精神的・肉体的・そして金銭的に負担がかかるということになります。

もちろんまた検査すれば次は陰性かもしれませんが、陰性の方の中にも「実際は癌」という方が含まれています。

ですから、「陽性でも癌でない可能性は十分ある」し、「陰性でも実は癌かもしれない」ということです。

実際、これでいえば癌でない人でも15%は誤って陽性と出てしまうわけです。

これを踏まえて受けてみるかどうか、よく考えてみるほうがいいです。

実際、癌かどうか、という検査で「陽性」と出る、ということはかなり精神的にも負担が大きいのではないでしょうか。

癌の患者さんが多い人にやればもう少し意味があるかもしれません

では、例えば癌の患者さんがもっとたくさんいるときにこの検査をするとどうなるでしょうか。

感度特異度2

例えば、40000人が癌で、60000人が癌でないような場合。

43000人の陽性者のうちで、34000人が癌、ということになります。

これぐらいならぎりぎり許容範囲でしょうか、、、。

とにかく、「同じ検査でもどのような人に行うかが大事」であることはわかっている必要があります。

リキッドバイオプシーって何?

患者さんの微量血液などを用いて検査する手法はリキッドバイオプシーといわれます。

健診目的のみならず、どのような抗がん剤が効くか判定する、あるいは治療効果を判定する、というような目的で使われます。(2)

今後がかなり期待される手法ですので、正しく、有効な方法で広がるように期待したいです。

(1)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

(2)https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/info/professional_semminer/2019/0308_09/Lecture_10.pdf

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