転居16

 檻の中に生きる動物は、雨を見ていながら、雨に濡れることはできなかった、場合によっては、死ぬまで雨に濡れることができなかった、アルは雨を避け、コップの内側以外、外側、が濡れていることを気にし、テーブルが濡れていることを気にしている、手の一部が湿っていることを気にしている、植物が濡れているのも生々しい、早く髪の毛を伸ばしたいのだ、アルの住む家は小さな虫ならいつでも入れるようになっている、でも家はあまりにも大きくいつでも出れるということはない、大きさが、あるいは空気の流れが、弁の役割を果たしている、そうして髪の毛は伸び、植物たちは宙空へ伸び、虫がその体を濡らすのはアルが振りかざしたシャワー状の熱湯によってだった、かなり窮屈な管を通ってきた水だった。

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