転居22

 アルが上がろうとするとスリッパが差し出され、ありがたく感じ、礼を述べた、小さなオフィスで、風通しが悪いというわけでもなく、ただ小さいオフィスであるから風通しについて考えただけであるというもので、赤茶色の、来客用とペンで書かれたスリッパを履いてなんとなくの衝立のあるスペースに案内されて椅子に座る、質問をする人は、落ち着いた、でも鮮やかな印象のオレンジの服を着ていて、ほとんどの時間上半身しか見ていなくてそれ以外の服装は記憶にない、その人の背景は一面窓で、隣の白っぽいビルの壁面が見えていたと思う、ただそれよりも、太陽の明るさが差したり差さなくなったりすることに気を取られていた、質問をされる人はアル、この場面は面接と呼べる、事前に読んだメールに、面接時間は一時間から一時間半と書いていて、長いもんだ、と思っていたら、作文をする時間が一時間あった、原稿用紙の帳面とテーマの書いた紙を渡される、一時間あるので、最初なんとなくぼんやりしていたら、最後少し時間を過ぎ、一時間というものの手触りを感じる、最後に質問はありますかと質問され、事前に考えていた質問を答えた、それまで緊張していなかったのに、本日はお忙しい中ありがとうございました、失礼します、と口に出すタイミングと、スリッパを脱いで片付けたり扉を開けたり閉めたりするタイミングのことを考え小さな混乱が生じ、扉を閉めるまでの一瞬間緊張した、ビルから出て、置いてあった椅子に座ってスニーカーに履き替えた

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