転居14

 ちょうど七つ鐘が打つのを順当に予測しながら数えて左斜め後ろに位置する人間が手かなにかに吹き掛けたアルコールの匂いの粒を嗅ぎながら珈琲を飲む前から縁取られていた胃に珈琲を飲んでもう一層胃の内側から縁取りを確かにした珈琲は数日後から値上がりするということだ、詩人が綴った日記に記録された喫茶店は、冷たくべたついた石のiPhoneの中の Google mapsの検索によると既に存在しない、数冊の本にその名前が記録され、数枚の写真が誰かの家の机の抽出しに差し込まれ、あるいは数人の人間の細胞の中に微量に堆積する、存在は水蒸気のように噴射し、その後散逸する。日毎形態を変え、やがてそれ自身にだけ聞こえる声で挨拶し、去る。

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