転居19

 目を開けると雪が積もっていて線路の際に溜まった雪は、白い袋の土嚢だった、曇りの町は雪に馴染む色調だと思った、六月だった、アルは一人だったからカウンターでも構わないが、もう少し待ちますか、と店員の人に訊かれて、なんとなく遠慮して、待つことにしたが、実際その類の遠慮よりも、混雑してきたから、テーブル席には二人以上の人が座ったほうが、効率はよかった、アルは席について、向かいのテーブルで細いグラスのレモンティー、薄いレモンが浮かべてあったからレモンティーだという、それに、シロップが注がれるのを見た、きらめくものが注がれた、アルにはそれが見えたが、注いでいた人には見えなかった、この場合待つというのはそういうことだった。アルは、友人に対して願うことは何か考え、それを自分に対してやってみることにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?