転居1

 小さすぎる犬が大きすぎるアスファルトに立つ。魂に対して小さすぎるあばら。三度Google mapsを見ながら歩いてようやく覚えた駅までの道、二回曲がるだけだ、小川がある、まだ五回くらいしか横を通っていないがそのうちの四回は同じ場所に鯉が集合している、あとの一回は泳いで移動しているところを見た、犬は人に連れられている、一見して弱々しく到底生き延びられる感じがない、その中に生命があるという、生命の大きさ。エアコンの室外機から伸びるパイプに似たものが水中にあって焦点を合わせると魚のようだ、死んでいるようで全体が白く口元だけ水面に出ている、そこに細かい枝や茎が枯れていくらか溜まっている、もともと白い体をもって生まれたのか、水流にあたるうちに白くなったのか、アルはこの話を、声に出してみたいとは思わなかった、この町の人間の発声の方法は、いきなり似通っている、その辺の喫茶店に、三日間でも通ってみればすぐにわかる、それがアルの培ってきた発声の方法に似ている、今日見た夢の中の洗面所は、まだ大学時代の下宿先のそれだ。

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