転居3

 新幹線の内側から、富士山が見えなくなるまでを見ていて、この列島で一番高い山であるということを考えてみた、そもそも列島ということも、よくわからないが、一番高い山であるという命題は、なんとなく胃の周辺の液体やらを、遠赤外線で温めるようで、そのあと疲れた。アルは大抵、いま温められた辺りで、指を組み合わせながら歩いた。本屋で本棚の前に立っているときからそうなっていた。作業着を着て、なにか目的がありそうに歩いている人たちは、指を組み合わせて歩かない。そのことは知っていた。換気扇は、ファンがむき出しになっているものに変わったので、わかりやすさを感じていた。聴こえた音に説明文を付ける癖のことを考えれば、そのほうが快かったことだろう。アルが便宜上傘袋を傘に被せても、大きな箱型の施設に入ると、気づかないうちに必ず消えた。今日交差点でその傘袋を代表して見つけた。完全な十字型ではない交差点で、空が水色で、電線よりも上を舞っている。向かいの空と、レンガではない、赤みの強い橙の壁面の色合いが明確だった。傘袋はここにあり、またどこかへ行った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?