転居13

 羽虫たちは夕立のある一粒に一撃で落とされるか、自ら脱ぐことのできない衣の重さに突っ伏した。雷の休まる隙にいちいち聴こえてくる子供らしい声は、雷が適当な場所に落ちる瞬間、何に守られていただろうか。淡いブルーのシャツを着たフォーク・デュオの歌は聴き終わるといつもなにか重い気分になった。アルは足の裏が冷たく汗をかいていくのを感じながら、パックの白米をレンジにかけて隣人が鼻をかむ音を聞き、そのあとベランダに出た。目の前にはコンクリート打ち放しの高級そうな住宅があるだけで、目に見える物語はない、ただこの頑丈な、ほとんど自然の憤怒にしか揺らすことができないと思われる家のすぐ脇で水平に位置するアルの尻は、トラックが通ることで避けがたく振動する。眼球に疲れが溜まっていると感じ、指で少し抑えたあと、細胞に集る小さな虫が飛び去るのを待った。

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