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場所との調和に想いを寄せる、礼装での着物じたく

つい数日前まで凍えるほどの日々だったのに、気がつけば少し寒さが和らいできました。
暦の上でも春の到来を告げる立春の候となりました。

この時期、入学式や卒業式など、新しい門出を迎える準備をされている方も多いのでは……。ということで今回はフォーマルな着物について。

「フォーマルなシーンは他にも結婚式やお仕事上でのパーティがありますね。『何を着て行こう』と迷うことが多いのではないでしょうか。そんな時こそぜひ着物も選択肢に入れて欲しいなと思います」

しかし、選ぶにも着るにもいつもより時間がかかるかもしれません。

「その日その場所のために何を着るか。どんな会場で、どのような方達がいらっしゃるのか。季節は、時間はーー。最大限の気持ちを表現できたらと思いながら着物を選んでいます。支度をしながら、自分が行くべき場所を想像し、そこに自分を合わせていきます」

面倒と思わずに、準備をする時間さえも大切にできるなんて。時と時の間さえも楽しめたら、毎日はもっと豊かな時間が増えるかもしれません。

しかし着物に興味を持ったとしても、持っていなかったり、自分では着られなかったりと、他の問題も出てきます。諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。

「まずは着物レンタルや、着付けをお願いしてもいいのではないでしょうか。どのような場で着るのか、自分の好みと共に相談すれば、親切にアドバイスしていただけると思います。もし、これを機に始めの一枚をお探しなら色無地はいかがでしょう。紋を入れて袋帯を合わせたらフォーマルな場に着て行けますし、名古屋帯を合わせればカジュアルな場にも着られます。着て行ける場所が多いんです。中でも薄い色の色無地はどんな帯とも合わせやすく、上品で優しい着姿を作ってくれるのでおすすめです。大人の女性にはとても相性のいい色なんですよ。これは先日お誂えした色無地なんですが……」

新しいたとう紙の紐をゆっくりとほどいて見せてくれたのは、青みがかったシルバーの色無地でした。

「白生地から染めてもらったんです。光沢のある反物だったので、この素材を最大限に生かせる色にしようと思いました。青みがかったシルバーは陽の光や照明に反射して光沢感が引き立つんです。白のままで着るのもいいなと思ったのですが、結婚式には向きませんよね。花嫁の色ですから。それに白はとても目立つ色でもあります。ファッションとして着るならいいのですが、フォーマルな場で着るには少し難しい色。どうしたらその場に調和するか。それがフォーマルな場での着物を考えるときに最も大切にしていることです」

また、着方によって印象は随分と変えられると言います。

「まずは裾線。長めに着て丸みを作ることでとても優雅で上品に見えます」


「それから帯は、いつもより少し上になるようにしながらお太鼓を少しだけ大きめに作ります。仕上げにお太鼓の下線を丸くすると上品な印象に仕上がります」

「衿は少し詰め気味に。喉のくぼみより少しだけ落とした場所で衿を合わせます。そしていつもよりも胸元や背中などのシワに注意を払いましょう。丁寧に着ることを心がけることが美しい着姿につながります。

でもあとはあまりルールに縛られず、好きなものを身につけて欲しいと思います。ご自身が好きな着物、帯、草履、バッグを身につけたら、表情は自然と表に現れます。それは心と身体の豊かさにつながると思うんです。よく『着物だからこの色を選びました』という方がいらっしゃいます。本当に永く愛せるか、決断をする前にもう一度考えてください。決して安いお買い物ではありません。この色、という心躍るものを選んでくださいね」

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