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貨物列車はどのくらい長くできるのか

JRの新幹線・在来線を合わせた中で最も長い列車は、東京〜福岡で走る貨物列車である。
機関車1両が貨車を最大26両牽引し、その長さは約540mに達する。

山陽本線を快走する貨物列車(筆者撮影)

貨物列車の運行にかかるコストのうち、大半が貨車の数に関係のない「固定費」である。
そのため、機関車の性能が許す限り貨車をたくさん牽引したほうが、貨車1両あたりのコストが減って経済的である。
アメリカなどでは、強力な機関車で1マイル(約1600m)を超えるような非常に長い列車を運転し、安価な輸送を実現している。

では、日本ではなぜそのような長い列車がないのかというと、貨物駅が狭くて列車が収まらないからである。
国土が狭く、人口密度の高い日本では、広大な貨物駅を作れるような土地がないのである。

百済貨物ターミナル(筆者撮影)
写真正面のコンテナホームは貨車26両に対応しているが、一番奥のコンテナホームは20両にしか対応していない。

駅の長さは貨物駅以外の旅客駅でも必要である。
単線区間なら列車がすれ違うため、複線区間なら他の列車を追い抜いたり追い抜かれたりするために、貨物列車が収まるような長さの線路を敷く必要があるのだ。

どちらの場合も、単純に線路の長さが列車の最大長になるわけではない。
多少オーバーランしても車止めや他の列車に衝突しないよう、余裕をもって列車の長さを決めている。国鉄が1958年に編纂した「鉄道辞典」の「線路有効長」の項によると、この余裕は35m程度であるそうだ。
このようにして算出される、線路に停車できる列車の長さのことを、「線路有効長」または「有効長」という。

美祢線厚保駅(筆者撮影)
かつて石灰石を運ぶ貨物列車が多く走っていたので、ローカル線としてはすれ違い用の線路がかなり長い。

同じく「鉄道辞典」によると、当時、線路種別ごとの有効長の整備目標は以下のとおりであった。

甲線(主要幹線) 460〜600m
乙線(中間的な路線)250〜460m
丙線(ローカル線)150〜360m

1300トン列車の長さが540mであることを考えると、有効長600mはついに実現しなかったということがわかる。
民営化直後には超ハイパワー機関車EF200形で1600トン列車を運行する構想があったようだが、1600トン列車の長さは660mに達し、仮にバブル崩壊がなかったとしてもその実現は困難を極めただろう。

定期運用終了後、期間限定で京都鉄道博物館に展示されたEF200形2号機(筆者撮影)

他の幹線はどうか。
現在、東海道・山陽・鹿児島本線に次ぐ貨物の大動脈である東北・津軽海峡・函館・室蘭・千歳線(東京〜札幌)や、日本海縦貫線(京都〜青森)の最長列車は1000トン(機関車1両+コンテナ貨車20両)で420mである。
中央本線では1100トンの列車が走るが、これはコンテナ貨車より短くて重い石油タンク貨車の列車なので、列車の長さとしては短くなる。

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