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#32 映画「福田村事件」のあとがき

いほりです。
#32のオープニングでちらっと話した、映画「福田村事件」についてです。

※映画の内容に触れます!


映画「福田村事件」が9月1日に公開されました。
関東大震災で起きた朝鮮人虐殺に関連する事件を基にした作品です。

この「福田村事件」というのは、関東大震災直後の「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが膨れ上がり、方言を喋る日本人を朝鮮人と疑い、市井の人々が手にかけてしまった事件です。ここには日本国内での被差別部落に対する偏見も含まれており、複雑な状況から生まれた悲惨な事件だったのだと思います。

ちなみに加害者として起訴されたのは福田村と田中村の村人なので、実際には「福田村田中村事件」ではないかと言われているそうです。

以前ポッドキャストでも言ったように、日本は自国の負の側面を見ようとしない、見せようとしない空気が強いと感じています。
昨年配信されたドラマ「Pachinko/パチンコ」は本当に素晴らしい作品なのに、日本でのプロモーションはほとんどされてないように見受けられました。他国が描いた朝鮮人虐殺の場面があるからでしょうか。 
日本国内の作品の多くは、日本の被害を描くものだと思っています。学生時代に学んだ歴史も、そんな印象を受けたように記憶しています。もちろん被害を受けた人々が大勢いて、その傷が癒えずに残っていることも理解しています。
けれど歴史とはやはり地続きで、被害だけを取り出して、その背後にあった加害の側面、負の歴史を見ないふりは、決してしてはいけないのだと思うのです。実際、朝鮮人に対するデマを信じ、殺人行為に走ってしまった背景には、「日本がこれまで虐げてきた朝鮮人は、日本人を恨んでいるはずだ」という心情もありました。

今、日本にある中国や韓国への差別や偏見の声は、歴史認識の偏りによるものもあるのではないか、と感じています。
なんならこの記事も「日本を貶めるのか」なんて思う人がいるかもしれません。SNSでよく見かける言葉です。貶めているのは誰なのよ。より良い方向へと進んでほしいから、過去を見つめ受け入れる覚悟を持ちたいし、持ってほしいです。

「福田村事件」映画そのものの話をすると、エンタメに昇華するための演出が気にはなりました。
年配の男と義娘の性愛で繋がる関係性、亡くなった男の顔を裸の胸で抱きしめる描写..
女にどんな幻想を抱いているんや、などと思いはしましたが、同時に、そんなこと言ってる場合じゃないのだろうとも思いました。

今の日本で、日本人の手で、この作品が生み出されたことこそが重要です。「朝鮮人虐殺を裏付ける記録はない」と言い放ってしまう政治家がいる国なわけだし。

わたしは知ることも、考えることも、誰かと話すことも、できる範囲で続けていきたいです。嫌になることもありますが。

自浄作用、高めたいですね。


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