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【#79】本当にわかる世界経済

概要
 本当にわかる世界経済。各国各地域の経済情勢からグローバル化、格差拡大、世界の中の日本まで、経済を見据える上での指標やこれまでの出来事について、丁寧に解説された本。
それを読むことの目的
 各国経済について専門家によるレビューを読んで、知識として知っておきたかった。
 また、これまでのマクロな世界経済がどんなもんだったかのロジックをざっくり知っておきたかった。
いつまでに読むか
未定

アウトプット(転用)
• 当分は疑問点が浮かんでくるまで、繰り返し本書を読み込む。
• 1章ごと読んで内容の深堀りを行い、ツッコミを行う。
Geography nowなどを見て、文化も一緒に合わせて見ておく。
• マクロに世界経済のこれまでと流れが見えたことで、よりミクロに日本経済の見通しをみることが肝要=日本経済見通しを読む習慣をつける。=日本における企業研究や業界研究。
• 業界研究=四季報のKindle本
• 企業研究=財務諸表をチェックする。
アウトプット(抽象化)
アメリカ
・強みは基軸通貨としてのドルと移民の労働力。
・外国為替市場における取引高では米国ドルが全体の4割以上を締める。
=外貨準備に米国債を買う。
・内向きの姿勢がモンロー主義の時代にあったことから残っている。
・保護貿易政策は長期的に国の経済成長率を下げてしまう。

EU
・ギリシア危機やブレクジット、ユーロ通貨が共通していることを介したEU・他国の経済状況の影響をもろに受けることから、統合のほころびが出始めている。
・福祉国家としての維持も、人口減少や経済成長の鈍化により、難しくなってきている。


中国
・中国は世界1の経済大国だが、少子高齢化と地域間格差、非生産的な国有企業の存在、見返りの少ないゾンビ企業への過剰投資、政府が銀行を操作できる、増加の一途をたどる膨大な債務などの問題がひしめいている。
・アジア投資銀行など、大概的な一帯一路政策を躍進的に進めている。
・地域経済が経済成長ベースで測られることから、短期的な利益を見込んだ過剰投資、過剰設備、過剰雇用が起こっている。


インド
・外資の規制、輸入規制、民間企業の規制が多く、成長率が低かった。
・約半分が農業。
・製造業が育っていないが、サービス業が外資の流入により盛んになっている。
・地方政府が強く中央政府が機能していない。
・国内の格差が大きい。
・女性蔑視など。


アジアNIES
・シンガポール、韓国、台湾、香港。
・シンガポールは国際競争力が米国の次。関税率が0%に近く自由貿易に積極的なことに起因する。
・対中依存度が高い。


ロシア
・欧米との対立。
・資源への依存。
・国営企業が残っている。
・債務が少ない。


中東
・従来型の農業が発展してこなかった。
・工業化のための労働不足。
・オイルマネー。
・イスラム社会。


オセアニア
・観光業。
・鉱物資源。
・農作物・鉱物資源への外資による投資。
・不動産への投資。


ラテンアメリカ
・ハイパーインフレーション。
・工業化に向けて国内企業への補助金を増やす一方で、税収制度を確立できず、財政赤字・債務が拡大した。
・IMFによる構造調整が行われた。

東南アジア
・ASEANを皮切りに、地域間での経済成長が著しく、一方で、汚職などがなかなかなくならない事情が存在。


アフリカ
・ヨーロッパによる分断が文化的な分断とは異なるため統治が難しかった。
・各国の人工は少ない。
・IMFによる構造調整が行われていた。
・サハラ以南の治安の悪さや一次産業に依存した経済など、課題は多い。
・中国の影響力が大きい。


グローバル化する世界
• 物流ネットワーク・コンテナ船の開発・IT化に伴い、輸送コストが下がった。
• 関税やその他手続きの撤廃。生産される財が複雑になったことで、分業化の利点が上がった。
• 貿易の拡大で、比較優位な産業とそうでない産業間で格差が生じた。
• 外貨準備は、貿易の黒字分が主だが、積極的に中央銀行が蓄えるものもあり、外貨資産としての国債を蓄えている。
• 保護すべき産業については関税の例外規定等が設けられた。
• 経済共同体は経済圏のブロック化という負の側面も持っている。
• 直接投資の規模は現在GDP計の30%を締める。
• グローバリズムの不利益に対し、人々が代替が難しいスキルを身につけること、外国企業の誘致を推奨。
• 参照「クルーグマン国際経済学 理論と政策」


マネーフロー
• 国際金融には、資本の自由な移動、金融政策の独立性(ユーロとかは共通しているから独立でない)、為替相場の安定(自国通貨の価値を一定にする)において、同時に3つを成り立たせられない、トリレンマが生じている。
• 米国が冷戦や国内の公民権運動に当てるお金、日本やドイツの復活に因る輸出力低下のため、固定相場制から                                                                                                                                                                 
• 変動相場制になった=資金流入や流出へ=金融危機の大規模化へ
• リーマンショックは、不動産価格下落に伴うサブプライムローンの不良債権化、経常赤字を出し続ける米国とオイルマネーで経常黒字を出す中等や新興国などの「グローバルインバランス」が生じた。=リーマン・ブラザーズが売っていた債権(証券化商品)が次々と投げ売りされ、巨額の損失で倒産。
• 中国ではシャドーバンキングが問題となっている。銀行の資金調達として、理財商品や委託融資を行う。普通の銀行の預金金利よりも利回りが高いため、シャドーバンキングとされている。
• 中国のシャドーバンキング市場はGDP比で50%。
• 余剰マネーがあるため資産運用として使う傾向が高まり、しかしそれは不良債権であることが多く、不良債権が増えていく。
• 一帯一路構想で、海外への余剰マネーのインフラ投資が増えている。シルクロード基金やAIIB。他にも、中国国内で不動産価格の下落を恐れ、海外の不動産投資に中国マネーが流れている。
• 一帯一路:自由と民主主義を重んじる先進国からは、中国の共産党一党支配体制に対して文句を言われてしまうから、仲間を増やそうというのは中国の目的。本来は国内で余ったリーマン・ショック後のインフラ投資が終わり余ったセメントや鉄を輸出するはけ口を構想した。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐ物流ルートをつくって、貿易を活発化させ、経済成長につなげようというもの。中国ーヨーロッパ間は鉄道が通っている。ロシアだけでなく、中央アジアからエネルギーを仕入れるようパイプラインを建設している。陸路と海路はつながっている。日本は、参加をはっきり表明していないけれども、第三国市場での協力という形で、個別の案件ごとに協力を検討していくというスタンス。ラオス、モンゴル、パキスタン、スリランカなどの8か国が、一帯一路に伴う債務問題に直面している。(中国政府が拠点としたいがために意図的に仕組んでいる)スリランカは99年間実質的に港の使用権を譲ったことで、中国海軍のインド洋の覇権が強まった。=新植民地主義=欧米から反発。各地の大学に孔子学院(中国語と中国文化を教える非営利の教育期間)を設置したり、各地の言語で中国のニュースセンターを作ったり。結果として、中国とヨーロッパ間の貧しい国でインフラができていくことで、格差是正につながる可能性を秘めている。
• 参照「国際金融と経済ー国際マクロ経済学入門ー」


低成長とインフレ
• 日本の失われた十年や欧米の金融危機後のデフレ低成長から、現在は高インフレを伴わないゆるやかな成長(=ゴルディロックス経済)へと移行している。
• 金融危機後の失業は、長期間にわたり失業状態にあったヒトの職能を下げ、低賃金労働へのシフトにつながった。(ロスジェネ世代)
• 物価の低迷は、製造コストの低下、賃金の低下、エネルギー価格の低下(シェール革命・中国の成長率低下)など、複数の要因が複雑に絡み合っている。
• 賃金の低下は景気に依存したものと、産業構造変化(IT化によるホワイトカラー・ブルーカラーの賃金低下・高齢化(高齢者はスキル取得が難しい)・)に依存したものの2種類が存在する。
• 参照「Free digital Economy, 2017, Nakamura」


富の偏在
• 労働力不足など、他のアジア諸国でも移民に頼る必要性が出てきたため、日本の移民待遇改善が求められている。
• 先進国への富の集中、途上国の頭脳流出の一方、先進国での自国民の雇用機会の減少、途上国への仕送り、グローバル化に伴い国内労働力に頼らなくても良くなったことから先進国での賃金の伸び悩み。
• 金融危機後の金融緩和で資産価格は上昇している。資産を持つ富裕層は得する=格差拡大
• コロナも、株価が上がっており、株を持つ富裕層は得することで、格差拡大につながっている。
• 二極化は、貧困層の生活を優先し教育への支出を抑制する傾向がある。=さらなる二極化
• 福祉対策として、ネガティブインカムタックス(一定水準イカの給与の人にはマイナス税)やユニバーサルクレジット(福祉の一本化して、就労世帯に一定の期間一定の収入を与える)などが考案されている。
• 参照「トマ・ピケティ21世紀の資本」
• 参照「山田久、外国人労働とどう向き合うか」


国境を超える環境破壊
• 環境は公共財であり、ほとんど国をまたがって影響があり(切った気が他の国で消費されている)、経済成長とトレードオフがあるため、解決が難しい。
• 汚染者負担か、受益者負担か。
• 途上国と先進国の対立。
• SDGsの前のMDGsは飲水以外ほとんど達成されなかった。
• 2015年のパリ協定は産業革命以前からの気温上昇を2度以下に抑えることが目標とされている。
• 単位排出量あたりの生産量が上がれば良い。
• 欧州では再生可能エネルギーが増えていく見込み。
• アメリカは州によって対応が全く異なる。
• 中国は最もCo2を排出しているものの、欧州と同レベルで再生可能エネルギーへのシフトが起こっている。
• 参照「入門 公共経済学」


世界経済の中の日本
• 自動車部品の規格の統一化・部品の共通化・自動車の必要性低下・ライフスタイルの変化など、自動車産業が日本を支えていけるかは不透明。
• 電子部品に優位性があったが、現在は、付加価値の高い電子部品や電子部品を製造する機会にいて競争性を有しており、今後もそこがポイントになってくる。
• サプライチェーンにしても自動車や電子部品にしても、自由貿易で儲かってきたから、自由貿易は日本の経済成長において重要な要素だった。
• クリステンセンが言うところの破壊的イノベーションが求められる。
• 失われた20年からの回復は、米国経済が順調になったこと、金融緩和政策のおかげ。これらに依存しない成長を続けられるかが鍵。加えて、生産年齢人口が下がるので、労働力においてはひとりひとりの付加価値生産性が上がることが肝要になってくる。
• 人工構造の変化は社会保障の維持に支障をきたす。
• 社会保障は高齢者だけでなくすべての人への保険制度を含むもの。単身世帯が25%を上回ったこと、高齢者への保険が7わりを超えることから、年齢に頼らず、個人や企業の所得と資産、不動産や、株、相続などについて把握し、不労所得からの歳入を増やしたり、経済成長を妨げる要因を可能な限りなくしたり、貿易/投資/移民に開かれた国にしたり、子供の数を増やしたりしていく取り組みが大事。


世界経済を支える国際会議と国際組織
• 世界全体のGDPに対して、G7は3割、G20は7割。
• G20はリーマンショックあとの金融危機に対抗するために最初に開催された。
• ダボス会議は「世界経済フォーラムが世界中の政治指導者やグローバル企業の経営者を含めてグローバルな課題に着いて議論される。
• WTO:貿易の数量制限を原則禁止・関税の基準は公平にする。他国をWTOを介して提訴可能。
• UN:主要機関と補助機関からなる。World Economics situation and prospectsを発行する。国連開発計画は人間開発指数を発表している。
• 世銀:長期的なプロジェクトに対して融資したり、技術支援したり。Global economic prospectsを発行し、途上国や先進国の地域別で景気見通しがわかる。
• IMF:緊急時に緊縮財政(増税、政府支出削減。景気は悪くなる)を条件に融資を行う。為替相場の安定も行う。World economic outlookを頻繁に発表している。
• 国際決済銀行(BIS):世界の中央銀行の中央銀行。中銀総裁があつまって話し合っている。国際金融システムの安定化。自己資本比率規制やきゅうな資金引き出しに備える流動性規制、過大なリスクテイクを抑えるレバレッジ比率規制などを行っている。
• OECD:先進国の意見・情報交換の場。
• ADB:アジア・太平洋地域の経済発展を支援。日本は最大の出資国で、総裁も日本人。
• AIIB:中国が事実上の拒否権を持つ。日本と米国以外はほとんどすべての主要な国が参加。
• 参照「日本経済見通し」


データで見る世界経済
• GDP
• 3つの計算方法。国内総生産=付加価値の総和。国内総支出=あらゆる消費支出+純支出。国内総所得=生産活動で得られたお金が分配された分。
• 計算における基準で、GDPの大きさも変動する。人間活動の豊かさや家庭内労働が含まれないなど、GDPには限界がある。
• 物価
• 消費者物価指数・企業物価指数・輸入物価指数・GDPデフレデータなど、色々あるが、経済の体温を反映する。標準値からの変動を捉える。
• 原油価格の上昇で景気が悪くても物価が上がるような、スタグフレーションの可能性もあり。
• 日本では2%の消費者物価指数の上昇率を目指し金融緩和が行われているが、潜在成長率が低迷しているため、難しい。
• 失業率
• 高い失業率は犯罪率や自殺率の上昇など、社会の混乱を招く。
• 貿易収支
• 貿易赤字でも、消費者は輸入によってより質の高い安いものを買えるから良いというケースがあり、赤字は悪ではない。
• 関税を課しても、相手からも関税を受ける可能性がある。
• 経常収支
• ある国が他の国から受け取るモノから支払うモノを引いたもの。金のやり取りを表したものが資本収支であり、資本収支と経常収支をあわせて国際収支。
• 資本収支=金融収支+資本移転等収支
• 経常赤字もそれ自体は問題にはならない。
• 経常収支の推移から、製造国から投資・サービス(旅行とか)で設ける国に推移しているのがわかる。
• 財政収支
• 税収+歳出削減+景気回復による再入増加により、財政赤字をなんとかしようとしているのが現状。
• ユーロは信認維持のため、財政赤字幅が対GDP比3%以下になるように促している。
• 株価
• 株価の動きは、金融資産を介した消費行動への影響、企業業績上昇に伴う国民の賃金増加を介した消費行動への影響によって、マクロ経済を予測・判断する材料となる。
• 為替
• 実効為替レートは、為替レートの変動をそれぞれの国との貿易のWeightで加重平均して求めている。=総合的な自国通貨の価値
• 参照「マクロ経済学入門」「財政再建をどうすすめるか」

その他
• 貿易摩擦を緩和する目的で直接投資が行われるケースも存在する。
• 例)日本の自動車業界がアメリカでの自動車生産を行ったケース。
• グローバル化は、安価な海外製品に因る国内の雇用の減少や、国内企業が海外で活動するようになることで法人税等の税収の減少などの問題が生じる。
• 余剰マネーによる不動産バブルが起こっている。
• 先進国は低インフレ・低成長を続けているが、これは、金融危機の残り香、デジタル社会による仕事の変化による賃金の低迷、シェール革命や世界的な省エネ指向によるエネルギー価格の減少、デジタル化による人件費の低下による物価の下落が影響している。
• 人々の不満が反移民・反グローバリゼーションに移るが、実際にはグローバリズムでないと不況になってしまう。
• 国際機関についてのアレコレなど。
• GDPには、生産・分配・支出の3つの視点からの勘定の仕方があり、合計額は共通している。
• GDPは健康被害が入らなかったり、指標としての限界が露呈している。消費者物価指数などの方が、経済の熱を語るには良いとされる。
• 貿易赤字を減らそうとして関税をかけても、相手国も掛けて輸出額が減ったら、赤字が解消されるとは限らない状況になる可能性がある。
• 経常収支はそれ自体が問題になるわけではなく、過剰な投資や収益性の低い分野への投資が行われている場合に問題になる。
• 株価の動きは、金融資産を介した消費行動への影響、企業業績上昇に伴う国民の賃金増加を介した消費行動への影響によって、マクロ経済を予測・判断する材料となる。
• 汎用品は為替レートに影響されるが、多くのモノは国ごとに生産量にばらつきがあるため、為替レートが全てではない。
• 人口は減少しても、輸出入を増やせば、国内市場の縮小をカバーできるが、問題は、生産年齢人口の割合が低下したことにある。


参照
アフリカ
• アフリカ経済論
• 融資原告の経済学ーアフリカの今
• 経済大国アフリカー資源、食糧問題から開発政策まで
東南アジア
• 分業するアジアー深化するASEAN/中国の分業構造
• 東南アジアの経済ーASEAN4カ国を中心に見た
日本
日本経済見通し

写真
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