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大量論文撤回へ?神経科学権威エリーザー・マスリア疑惑

 研究論文の撤回が相次いでいる。いや、もはや日常というか。

 来週ノーベル賞の発表があるが、ノーベル賞受賞者の論文撤回も結構あるようで、Retraction Watchが特集していた。

 日本人の論文撤回も、Retraction Watchのランク上位に張り付いたままだ。まあ、このランキングは累計なので、減ることはないのだが。

 論文撤回は決してすべて悪というわけではないが、影響は大きい。撤回後のほうが多く引用される論文も多い。撤回されたことが気づかれないことが多いからだ。

日本発の撤回された論文が、いまだ引用されている「ゾンビ論文」になり、大きな影響を与えているという話もあった。

 ところで、今新たな「大量撤回」の予兆が出ている。

 それが神経科学者エリーザー・マスリア氏に関する疑惑だ。サイエンスが大きく取り上げ、gigazineも記事にしている。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の27の研究センターのひとつであるアメリカ国立老化研究所(NIA)で部門長を務め、神経科学分野の権威として知られる著名学者のエリーザー・マスリア氏の数百本にもおよぶ論文で、画像が偽造された可能性があると科学誌のScienceが指摘しています。

上記記事

 まだ撤回されているわけではないが、もしこの論文が撤回されることになれば、その影響は甚大だ。薬などの根拠にもなっているからだ。

米国国立老化研究所(National Institute on Aging)の神経科学部長であるエリーザー・マスリアが、数十年にわたり科学論文の画像を改ざんしていた可能性は、複数の製薬会社の不安を刺激しそうだ。 最近、彼の100以上の論文に関する文書に記された懸念は、最も直接的には、プロテナが開発したパーキンソン病の実験的治療薬を問題にしている。 ディメンジョンズ・アナリティクス社のデータによれば、神経疾患に関する238の特許も、この書類で指摘された疑わしい研究を引用している。 そして、これらの特許の企業ホルダーには、治療法に取り組んでいる数十の企業が含まれている。

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adt3536

 今後エリーザー・マスリア氏の疑惑は、医療界を揺るがす大スキャンダルに発展する可能性がある。STAP細胞事件の比ではない。

 この大スキャンダルの芽を報じている日本のメディアは少ない。

 神経科学と言えば、アルツハイマー病の論文に関する疑惑が取りざたさればかりだ。

 その2000回以上引用された論文は今年6月24日に撤回された。

著者らはこの記事を撤回したい。 図2cおよび補足図4を含む本論文の図に関して、スプライシング、複製、消しゴムツールの使用など、過剰な操作が見られるという懸念が提起された。 データは記録から検証できない。 我々は、論文の撤回が適切な行動であると考える。

Ming Teng Koh、Linda Kotilinek、Rakez Kayed、Charles G. Glabe、Michela Gallagher、Karen H. Asheは撤回に同意する。 シルヴァン・レスネは撤回に同意しない。 オースティン・ヤンは、この撤回に関する編集部からの連絡に返答していない。

https://www.nature.com/articles/s41586-024-07691-8

 今後も動向を追っていきたい。

 さて、以下の有料部分では、撤回論文の現状に関する論文を読んでみる。以下は別記事になっているので、無料部分だけでも記事は完結しているが、もし気になる人がいたら、記事をご購入いただきたい。定期購読者はもちろん読める。

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