コスモス

白銀の墟 玄の月 全4巻 読了しました

白銀の墟 玄の月全4巻読みました
まだ、精読というほど読み込めていませんが、最後まで読み通して脱力しています。
これで、終わったのだ、と放心しています。
まとまっていませんが、一度吐き出したいので思ったことをつれづれと綴ります

◆ラスト
私はこのラストに丕緒の鳥に収録の、風信や青条の蘭を連想しました。
あえて余韻を残し、読者に想像をさせる物語の閉じ方だと思います
しかしながら、私はそっちよりもはっきりとした回答がほしい。
風の万里 黎明の空のようなカタルシスを求めていたので、少し物足りなさは残ります
泰麒は回復する、とは言ってたものの実際元気な姿は作中では見られず二人で、なんとか戴を復興させるところもみることはできなかったのが心残りです
転変できるようになったのはすごくホッとしました。
使令が戻ると知って嬉しかったのですが実際のシーンはなく、鴻基の大立ち回りでは使令が戻ってきて助けてくれるのでは?と浅はかな期待をしていただけに残念でした。
(そううまく行かないのも十二国記の持ち味ですが)
今は、もうこれで終わったのだから、次に泰麒と会える約束はなくなってしまったのだ、という寂しさがあります。

◆阿選
琅燦ではないですが、全ては嫉妬なのだな、と思います。
思えば黄昏の岸 暁の天で泰麒に切りかかった阿選のセリフにすべてが集約されていました。
そして、阿選は前から目的と手段を履き違えるところがあり、そこが驍宗との器の差だったと。
先に誅伐にいって功を立てた阿選に対して、従うことを否とし仙籍を抜けた驍宗からもそこが描写されていました。
二人の関係は、お互いを意識せずにはいられなかった。それは阿選も驍宗も同じであって、実際のところ、阿選を一番理解していたのは、阿選を敬愛していた麾下ではなく驍宗だったのではないかと思います。
驍宗だけが唯一、文州におびき出されたのが阿選の罠で、阿選が立つと察していた。
そこでまんまと阿選の罠にハマってしまったのは、驍宗の驕りがあったのではないかと思います。
当初は自分を敬愛する麾下たちに汚れた仕事をさせたくなく、わざと豺虎を身のうちに飼っていた阿選ですが、最終的にはなりふりかまわなくなるのが悲しくて辛かったです。
阿選を見限り、戴のために働くと立ち上がった恵棟が傀儡にさせられるのは、いままで恵棟の視点シーンが重ねられ、一心に戴のために、泰麒のために働こうとしていた矢先のことだったので、非常に落ち込みました。
もっと悲しくなったのは、帰泉のところでした。
他の阿選の麾下に比べて、帰泉は曇りなく阿選のことを信じていた。大逆という罪を犯した阿選に対して、大逆を犯したのは、正当な王だからだと疑わず、それはあまりにも純粋で、狂信者だと思わせるほどでした。
その帰泉が、他ならぬ阿選に意志を持たない抜け殻にされて利用されて、最後は驍宗を庇ってなくなるのは非常に胸が痛みました。

◆李斎
柔らかくて強く、どんどん李斎を好きになっていくのをとめられませんでした。
石林観の沐雨を静之が攻めるシーンで李斎が諌めるところは李斎の強さが現れた好きなシーンです。
自分の立場ではなく相手の立場をちゃんと理解し、受け止めることができる
それは朽桟から信頼された場面でも共通しています。
慶に行き、助力を得たのも李斎でなければできなかったことだと思います。
武力だけではなく、李斎の人柄があればこそなし得たことで、存在が奇跡である麒麟が戻らなければ戴は動き出しませんでした。
阿選が李斎を不思議な人物だと評しているところがあります。
苦労して昇山して、目の前で驍宗が王に選ばれたのに、麾下として驍宗を敬愛するようになっている。阿選にはひっくりかえってもできなかったことをやってのけている。
女性であるということもあり、単純には比較できませんが、それがほかならぬ李斎の強さだと私は思っています。
李斎が生き残ってくれたことが本当に嬉しい。
そして、李斎がどれだけ飛燕を大事にし、ずっと苦楽をともにしてきたのを風の海から知っているので、飛燕がなくなってしまったのは本当に辛かったです

◆32の謎について
明らかに回答が分かったもの、なんとなく意を汲んだものを除いて3つほど残りましたが、ほぼ解決しました。
琅燦が阿選をそそのかしたのは、黄朱の民が思う王や麒麟の重さが戴の民とは異なるからだろう、好奇心、天の意志について知りたかったのか?と思いますが、驍宗サイドを助けている部分もあり、なんとなくわかりはしましたが、完全に飲み込むことはできていません。
淵にお供え物を流す民のところについては、「我ながらなかなかやるやんけ…」とニヤついてしましました。

白銀の墟 玄の月で終焉を迎えた戴の物語ですが、あまりにも辛いことが多すぎました。
たった一人が自分を律することができなかったために、失われるはずがなかった多くの人々が亡くなり、無用な苦しみもたくさんありました。
その分、一緒に戦ってきた戴の人々みんなに幸せになってほしいと思います
短編集はそれを期待しています。
苦しみをずっと重ねてきていた戴の民に救済があることを

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