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「一発屋タイプ」と「無事これ名馬タイプ」(イチロー選手日米通算4257安打記念)

イチロー選手が日米通算安打で4257安打に到達してめでたい。

私としては、日米通算を世界記録ってわざわざ主張する必要はないと思うし、日本人が日本でささやかに祝えば十分でないかと思う。そう考えると、ピート・ローズ氏が言わずもがななことを言ったのは損をしただけで、ほっとけば、勝手に外野がいろいろやってただけの話だろうにね。そこで言わずにおれなかったのは、それだけローズ氏が自分が永久追放になっている身分に過敏になっていたせいなんじゃなかろうか。そこまで気にしなくても大丈夫だったのに。。。

▶︎記憶に残る、と、記録に残る

優れた記録を残さなくても、ファンの心には残るスポーツ選手を指して、記憶に残る選手、と言うことがある。
名脇役的な意味合いが強いといえばよいのか。1シーズンとか継続的に高いレベルの記録は残してなくても、要所で目立つようなパターンってのが結構当てはまるのかな。
個人スポーツなら、国際大会などで優勝したり、金メダルといった成績は残してないけれど、印象は残している選手ってのはけっこういるんじゃないだろうか。

▶︎「一発屋」と「無事これ名馬」

野球のように安打やホームランの数は累積してって記録されるスポーツっていうのは少ないですよね。サッカーのゴール数とか。
チームスポーツで個人成績が注目されるものは少ないし、チームの結果も高々優勝回数レベルが多い。
個人スポーツでも、優勝回数や順位、あと陸上や水泳だと個人の最高記録といったところでしょうか。

イチロー選手はそのような積み重ねてできる記録、それも単に参加したのではなく、結果が出るようなものを重視してますが、超一流の選手というのは、1シーズンでも素晴らしい結果を残しているし、長い期間高いクオリティの結果も出し続けるので、通算記録としてもすばらしい結果になるわけですね。

一方で記憶に残るタイプだと、プロ野球だとデビューからすごい活躍した投手が酷使されて肩を壊して数年でダメになるようなタイプとかもあてはまりそうです。
きっと個人スポーツでもすっごく有望だけど、なぜかつぶれちゃう選手ってけっこういるんだと思います。

すぐに思いつくところだと、20年近く前に陸上中距離で高校生にして日本記録寸前までいったのに、大学以降記録を残せなかった佐藤清治選手とか、10年ほど前に水泳の100m自由形で日本人初の49秒台から48秒台までを2年ほどで成し遂げたけど20歳でパッタリ記録が出なくなった佐藤久佳選手(そこから10年近く経っても日本記録は0.4秒しか進んでない)とかね。。。

で、私はここで、特徴的キャリアのスポーツ選手を2人紹介したいと思います。
つまりは「一発屋」タイプと「無事これ名馬」タイプです。
1人は走り幅跳びのボブ・ビーモン選手。もう1人はフィギュアスケートの村主章枝選手です。すっごく対極的なキャリアで、私には印象深いのです。

▶︎「一発屋」のボブ・ビーモン選手

スポーツの世界にも一発屋みたいなのがあるとしたら、この選手はその最右翼なのではないでしょうか。
もちろん、アメリカを代表する走り幅跳び選手だったんですから、別に普段が全然ダメとかいうのでは全くないのですが、たった1回のジャンプが異常すぎたために、一発屋にしか見えないという。。。

現在の男子走り幅跳びの世界記録はマイク・パウエル選手が1991年に東京の世界選手権で出した8m95cmですが、ビーモン選手は1968年のメキシコオリンピックで8m90cmを跳び、その記録が23年間破られませんでした。(でも、考えてみたらパウエル選手の記録は25年破られてないんですよね。)

ただ、ビーモン選手の記録が異常なのは、それ以前の世界記録が8m35cmだったのを55cmも破ってしまったことです。走り高跳びで突然15cmも記録が破られるとか、槍投げで5mも記録が更新されることがないことを思えば、やはりこれは相当特殊なことです。

そのとんでもない記録は、メキシコという高地だったせいという理由がなされますが、その時の映像を見ると、ビーモン選手のジャンプはまるでその瞬間だけ、その場所の重力が減少したのではないか、と思うほど異常な高さで跳んで記録を出しているのです。

そして、ビーモン選手はこれ以前、当然のことながら8m30cm前後までしか跳んだことはなく、さらに言えばこれ以降の最高記録も8m22cmに過ぎないのです。(ちなみに、このオリンピックの銀メダリストの記録はこの後天候が悪化したせいもあって8m19cmです)

まさに一発屋でしょ!!

こんなことってあるんですね。そして、いまだに世界歴代2位の記録なんですから。この1度だけで伝説になった選手といえます。

▶︎「無事これ名馬」の村主章枝選手

以前、背泳ぎの選手として25年間第一線にいて、いまだに活躍する稲田法子選手のことを書きました

私はスポーツの個人の結果として、1シーズンや1回の記録よりも、いかに長く高いレベルにいたかの方が気になるのです。だから長く活躍している選手が好みです。

日本のフィギュアスケート界は最高のタレントが揃っている国といえるでしょうし、毎年、国際大会の最低メダルが狙えるレベルの選手が複数にいるような世界です。
だから、世界選手権やGPファイナル、オリンピックといったところで金メダル級でないと目立たないという過酷な世界でもあります。
そんな中で私が村主章枝選手がすごいと思うのはやはりキャリアの長さと、その中で出し続けた結果です。

たしかに佐藤有香、安藤美姫、浅田真央といった各選手のような最高の結果は出していないけれど、オリンピックに2度入賞し、世界選手権や、四大陸選手権、全日本選手権、GPといったものに出続けた期間、そしてそこでメダルや入賞した期間は随一だからです。おそらくこれを超えられるのは浅田真央選手だけ可能性があります。

フィギュアスケートのような過酷なスポーツで全日本選手権で最初にメダルを取ったのと最後に取ったのとの間が13シーズン離れている選手なんていないでしょう(浅田真央選手は今12シーズンです)。世界選手権の出場も9シーズンに渡ってます(浅田真央選手も今9シーズン)。
無事これ名馬をまさに地でいった選手だと思います。だから、もっと目立ってよかったのにねぇと思うのですね(まぁ、振付け師としてこれからさらなる活躍をされるでしょうが)。

イチロー選手の最大の特質はやはり「無事これ名馬」であり続けたことではないでしょうか。日本ですばらしい結果を出してアメリカのメジャーリーグを挑戦する選手がこれだけ増えても、いまいち結果が残しきれてないのは、みんな怪我をしているからでしょう。(特に投手はね)
そう思うと、やはりイチロー選手は体調管理や試合に臨むルーティンなど、まさに超一流だからこそ、なんだなぁと思うのですよ。で、そういう部分にも惹かれるので、私は息長く活躍する選手が好きなんだろうな。。。

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