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あの頃のバイク。【GPz900R Ninja】

●空冷Zとの決別。新たな道を行くための1台

現在も「元祖ニンジャ」として熱烈に支持されているGPZ900R。

Z1(900Super4)を超越するパフォーマンスを追求し開発されたGPZ900Rは、まさにカワサキのフロンティアスピリットの具現でした。

GPZ900R(以下、ニンジャ)の開発ストーリーに迫ります。

●名機・Z1を超えるために。カワサキの飽くなき挑戦

ホンダのCB750FOURがデビューして以降、一気に興隆したビッグバイク市場。

カワサキも1972年にZ1こと900SUPER4をリリースし世界中で大ヒットを飛ばしますが、新たな技術や理論が矢継ぎ早に生まれてくる成長過程の時代にあって、カワサキのエンジニアたちは次なる一手を打つ必要性に駆られていました。

当然、Z1から始まった空冷DOHCエンジンも年を追うごとに改良熟成が図られ、Z1000といった進化形が生み出されていたのも事実でした。

とはいえ、既に1,000ccもある空冷エンジンの性能をさらに上げるのは難しく、コストをかけずに性能向上を図るなら、もう排気量を拡大するくらいしか手段はありませんでした。

ただ、その排気量拡大という手段も、次には熱処理の問題やエンジンの肥大化(=重量増)等の問題を引き起こすこととなり、既存の空冷エンジンを用いるやり方では、いずれにせよ行き詰まることが目に見えていたのでした。

そこでカワサキは、Z1の血筋ではない、全く新しい心臓を携えた次世代車『GPz900R』を開発することを決断。

開発の初期には、最終的に採用された水冷4バルブ4気筒だけでなく、新技術を投入した空冷4バルブ4気筒、空冷2バルブ6気筒、さらにはV型エンジンまで、さまざまなエンジンが検討されます。

試作機を何パターンも作っての試行錯誤を繰り返した結果、安定して高出力を得られ、かつ軽くコンパクトに造ることのできる水冷4バルブ4気筒が採用されることとなりました。

エンジンレイアウトこそ吟味に吟味を重ねたカワサキだったが、排気量に関しては迷いなく900ccに設定。

パワーとエンジン寸法のバランスが理想的であること、そして何より、“あの”Z1のゲンを担ぐという意味も込められての900ccです。

メカニズム面では、サイドカムチェーン式が採用されているのが大きなポイント。

バイクのエンジンの場合、カムチェーンはエンジンの中央部に配置されるの(センターカムチェーン)が通例ですが、ニンジャのエンジンでは、これを左端に持っていきました。

こうすることで、燃焼室に入る混合気の流れが直線的となり吸気の高効率化が図れ、またシリンダーとの間仕切りを一つにできるのでエンジン自体のスリム化も果たしたのです。

また、当時4気筒エンジンへの採用が珍しかった二次バランサーも内蔵

バランサーを備えることでエンジンの振動を低減し、滑らかな乗り味を実現するとともに、エンジンブロックをフレームの一部として活用できるようになりました。

フレームは、主流だったクレードルタイプではなくダイヤモンドタイプを採用。

ダイヤモンドフレームはダウンチューブが無い分軽量に仕上げられ、また車体全体の重心も下げられるメリットがあり、数値的にも体感的にもより軽さを追求しやすかったのです。

要の剛性については、エンジン自体にフレームの役割も担わせることで確保。

16インチの前輪も特徴といえるでしょう。

当時の大型スポーツバイクの前輪径というと、18インチや19インチがメインでした(CB750F:18インチ、GSX1100S KATANA:19インチ)。

その定石に抗うように、カワサキはニンジャに小径ホイールを履かせたのです。

理論上では軽いハンドリングを得られるのだが、そうはいっても、実際に走らせた際の動きやフィーリングに関しては全くの未知数。

開発陣もさすがに慎重になり、18インチのプランも別に用意されていたようです。

探りさぐりの16インチホイールだったが、いざテストランを行うと、ビッグバイクらしからぬ軽快な旋回性を発揮。

ダンロップと協同で一から専用タイヤを開発するといった努力の甲斐もあり、「次世代スポーツバイク」を名乗るに相応しい俊敏な操縦性を獲得したのでした

そして、ニンジャといえばやはりこの個性的なデザイン。

Z1が今でいうところのネイキッドスタイルだったことから、ニンジャはフルカウルをまとったバイクとしてデザインされることとなりました。

実は、カワサキが市販車をフルカウルでデザインするのはこの時が初めて(開発中の1982年にカウル付き車両の市販が許可されたという背景もあります)。

デザインの段階では、単なる美しさだけにとどまらず、エアロダイナミクスの観点からも造形を工夫して成形。

最終的には、エッジの利いたフォルムに仕立てつつ、CdA値(空気抵抗値)で0.33という当時としては目を見張るほどの空気抵抗の小ささを実現しました。

このあたりは、航空機開発も手がけるカワサキだからこそ成し得た部分でしょう。

軽量高出力エンジン、軽いフレーム、空気抵抗の少ない外装で作り上げられたニンジャは、トップスピードで250km/h、ゼロヨン加速は10秒台という比類のないパフォーマンスを手に入れました。

1984年のデビュー以降は映画での露出などもあって一躍人気車種となり、その後2003年まで長きにわたって生産が続けられました。

結果的にニンジャはZ1と同じく、日本の名車の仲間入りを果たしたのでした。

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