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なぜ「エアなわとび」が効果的か

 ワークショップの翌日、太ももが筋肉痛になることがあります。
 原因は「エア縄跳び」です。
 1時間のお昼休みの後にワークを再開するときや、子どもたちを対象としたワークショップでは、身体を動かすアイスブレイクから始めるのが効果的。どよーんとした空気もあっという間に切り替わって、場が活性化します。

 「簡単なウォーミングアップから始めましょう」といって参加者に大きな輪になってもらい、「じゃあ、縄跳びをやります。縄を持ってください」といって両手に縄跳びの縄を持つ格好をする。そして、みんなで一緒に、前まわし、二重跳び!、三重跳び! 必死に縄を回して「三重跳び」に挑戦して笑いが起きたところで、次は「大縄跳び」。参加者のうちの誰か一人に手伝ってもらい、二人で見えない大縄を回して、参加者に一人ずつ順番に跳んでもらいます。
「一人ずつ順番に、真ん中まで走ってきて、ぴょんぴょんって2回跳んだらこっち側に抜けて」

 実際には縄はないのに、なかなか中に入るタイミングが掴めなかったり、タイミングがズレて「あれっ?」と、皆の笑いを誘ったり。中にはアクロバティックな跳び方をして拍手をされる人もいます。でも、どんなに運動が苦手な人でも絶対にひっかからないのが「エア縄跳び」のいいところです。
 慣れてくると、「跳ばずに走り抜ける」とか、「前の人と間隔を空けずにどんどん続いて行く」という、ちょっと高度なバリエーションもあります。一度に何人かで一緒に跳ぶのも面白いかもしれません。
 が、大きなアクションで大縄を回し続けるのは、実は、スクワットを何十回もやっているようなもので、おかげで後になって筋肉痛に悩まされるのです。

 先日、あるテレビ番組で、劇作家の平田オリザさんが演劇ワークショップの導入で「エア縄跳び」をやっているのを見ました。平田さんは、その意味を「(縄を)回す人と跳ぶ人が緊張感を共有していると、それがお客さんにも伝わる。お客さんは『跳べるかな』と思って見ている。これを私たちは『イメージを共有する』といいます」というふうに説明していました。
 なるほど。だから、「エア縄跳び」はアイスブレイクに効果的なんだね。そこにいる全員が、あっという間にひとつのイメージを共有し、その場に一体感が生まれるから。
 ただ「面白いから」「短時間で盛り上がるから」と思ってやっていた「エア縄跳び」ですが、平田オリザさんのおかげで、ワークショップ・デザインにおける意義が理論的に説き明かされました!?

 いや、実を言うと、ぼくだって、「エア縄跳び」をやるのは、たんに「楽しいから」「盛り上がるから」だけではない、それなりに意味があるのです。
 たとえば、中学校や高校に呼ばれて初めて会う子どもたちとワークショップをやるとき、「エア縄跳び」をやると、そのクラスにどんな子がいるか、簡単に知ることができるのです。
 大縄跳びで一人ずつ順に跳ぶとき、「キャーキャー」はしゃぎながらうれしそうに跳ぶ女の子、ウケをねらってわざとずっこける男の子。「わあー、(縄が)見える、見える!」と大きな声で言う子。はずかしそうに跳ぶ子。緊張した面持ちでうつむき加減に跳ぶ子・・・。
 部屋の真ん中まで走って行って、ピョン、ピョンと、2回跳ぶだけですが、その一瞬で、その人の性格やその時の気分がだいたい分かるのです。だから、大縄跳びをやるときは、その子の表情が見えるように、必ずぼくの方に向かって走って来て跳んでもらいます。
 誰かが跳んだときに、周りの子がどんな声をかけるかによって、その子とまわりの子の関係がなんとなくわかることもあります。それを見ながら、その日のワークショップの雰囲気づくりをどのように進めていくか考えます。

 実はけっこう深い「エア縄跳び」なのです。

 平田オリザさんのワークショップの紹介
https://tobira-project.info/blog/平田オリザ-演劇ワークヨップ(基礎編).html


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