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丈夫でメンテサイクルの長いBMXのホイールを組む

 あまりよくわかっていないが覚え書き的な。

 上の記事の続きになります。

 前記事を読まなくても判るようには記録しようと思うけど、流れとして今ここに書き記したいのは現状、BMXにおける簡単で高強度でメンテサイクルの長いスポークホイール組みを記そうと思っています。

 なお、前記事ではイタリアン8本組みダブルクロスと言っていましたが実際に完成している物をよく見ると反イタリアン8本組みダブルクロスだった事をここに謝罪しいろんな世代の写真が混ざり判りやすさの配慮に欠けていることを申し上げておきます。

必要なもの

※ 自転車整備一般工具類
※ ニップル回し。 使うニップルに合うもの
※ 振れ取り台かダイヤルゲージか結束バンド
※ ゴムハンマーか体重
※ センター出し治具 棒とボルトでも可
※ 必要ならホイールやタイヤの脱着に関するもの

まずは

 ハブとスポークとリムを用意します。 または組み換えるホイールをバラしニップルやスポークの検品をし、リムやハブにクラック等がないかよく検査します。 ダメな物を頑張って組んでも勿体ないからね。

 スポークの長さが難しいがダブルウォールリムなら短いよりわずかに長い方がいい。 長すぎるとスポークのネジ切っていない部分がニップルに突き当たってしまうが。 スポーク長計算サイトが便利です。

 世の多くのホイール組み指南ではまずハブに36本全てのスポークを通します、となっていますがこれが非常にやりにくい。 36本のスポークをジャラジャラとさせ、三分割にまとめて、都度必要なグループを解き通していく。 それが最適解であるとー

かつてやってみたやつ。 正直合理的ではないと思われる。 私には難しすぎる。

 本当にそうでしょうか。 ぼくがインターネットをさまよい見つけたやり方をアレンジしてたどり着いた、というかそれ以上のことは出来ないけど非常にシンプルで間違えにくい、こないだ間違えたけどたまにしか間違わないやり方はあるんじゃないかという壮大な覚え書きです。 これがパーフェクトだの余所はダメだの言う気は全くありませんが、とにかく一般のやり方は難しすぎるんです。

それでは

 まずハブを手に取り穴の数を数えます、 と、 そんな事をしなくても36穴のはずです。 32穴のハブホイールだよんって人は都度算数して考えてください。 あと32穴は8本組みは出来ません。 6本組みで組みましょう。

 ハブの片側に左回りと右回りがそれぞれ外からと中からスポークが通るようになっています。 こういうのは他の完成しているホイールをお手本にしてもいいと思いますが、一つだけ最初の通す位置に気を配ればハブのロゴとバルブホールとバルブホールの部分のスポークがクロスしないエアのチェックなどがやりやすい組み方になるその、ハブのメーカーロゴとバルブホールとスポークが平行になる部分を揃える事を、これさえ最初に決めてしまえば後は何も考えずに組み立てるだけです。

間違えた例。 バルブの所のスポークが狭いが空気は入れれるので問題なし。

組み立てを始める前に

 ニップルが入っていた小袋にそのまま、CRC潤滑油なり、グリーススプレーなりの浸透して伸びていくような油を少し吹き付けてシェイクして油まみれにします。 あまり多いとニップル緩みの原因になりますが、無しだとスポークテンションが偏ったりリム穴との摩擦が大きすぎて手応えがバラバラになって上手く組めなかったりします。

ワコーのチェーンルブ 本当はCRCのような寿命の短いもののほうがいいのかもしれない。

 スプレーなりを吹いてシェイクしたらウエスやペーパータオル的な物の上に出して軽く、本当に軽くふんわりと拭きます。 これで準備は完了です。

 さて、36穴が左面と右面の表と裏だから1/4に分けることが出来ますので、コグ側、右側の表から穴一つ飛ばしで9本刺していきます。 最初にハブのロゴのある場所から刺します。

表から刺すとスポークはハブの内側から生えてリムに向かいますのでこれが漕いだときにリムを回す役目の方向に向かうと反イタリアンだの反JISだのになるようです。 組んだ頃はその辺のご理解が足りていませんでしたが

ここが一番キモなのですが

 刺したスポークのロゴの位置のひとつ右のスポークをバルブホールから数えて左へ3つ目の穴に通しニップルで借固定します。 仮固定はスポークのネジ山が半分隠れる程度、あまり締め込むと後半余裕がなくなって辛いのとバランスに偏りが出て触れとりの時にかなり苦労するので抜けない程度でよいです。

これも少し間違えている気がするけど要は合うまでズラしていけばいつか答えにたどり着くという訳です。 ここだけが大変だけど、これを乗り越えるとあとは淡々と組むだけになります。

 二本目からは右へ4つ目へと飛ばしながら仮固定を繰り返し、9本留め終えたらハブを右回転に捻ります。 この時点でバルブホールからハブのロゴがセンターに見えていれば当たりです。
 ダメならやり直しましょう。 何かが間違っています。 仮にバルブホールとハブロゴが揃っていなくても(特にBMX乗りは)誰も気にしないとも思いますが、前途のバルブホールのスポークの並びはミスると面倒なのでその辺は気を付けていきたい。

このハブはRHDなのでLHDだと鏡像的に考えてください。 右へ、捻ると半イタリアンになります。
ハブのメーカーロゴは特に合わせなくても大丈夫ですが様式ということで。

 ロゴあわせが上手く行ったか、諦めが付いたらホイールを左側に裏返し、先に通した右側のスポークの半ピッチ右の穴に表から9本、通します。

ハブの穴をよく観察すると左右で半ピッチずれている。

 先程リムに通したスポークの一つ右に通して仮留めします。

スタートはどこからでもよい。

 9本差し込み終えたらまた捻って間違いないか確認。

ここまでは両面の裏スポークを組んだことになる。

 問題なければ今度はハブの右側に内側から残りの穴にスポークを通します。

内側から通すと表スポークになります。

表スポーク

 ここで反対向きのスポークを組み始めるのですが最後の注意点。 6本組みだの8本組みだの最初に言い出したのは誰なのかしらというやつで、スポークにはペアのスポークがあります。横から見ると一番外周で交差している二本のスポーク。 これのハブ側の通ってる穴の数が6個目か8個目かということです。 6本組みのほうがスポークがわずかに短く軽くて直線的で剛性があり、8本組みはしなやかで軟らかいが少しスポークが長い。 だけど6本組みではおそらく固すぎてメカ的な余裕がなく強い衝撃の逃げが足りないのかなと思っていて、8本組みでカンカンにスポークを張った方が今の所メンテサイクルは長いです。 たぶん。
 スポークを裏スポークの間に通していく時に、三本交差なので最初に組んだスポークと三カ所交差し、三カ所目を下にくぐらせ穴に通すとシングルクロス

この写真群はシングルクロスで組んでいた頃の

 一番最初の近すぎる交差をスルーして2番目と3番目の交差を編むとダブルクロスとなります。

この画像なんかを元に、表スポークの一本目をどのリム穴に通せば8本組みになるかをよく見る。 交差部で二回編まれている。

 だいたい流れが掴めたらあとは勢い。残りの8本のスポークもハブに通してしまいます。 そのまま裏返して反対面の表スポークも同じように通します。 最後の方は20インチ故? 本当にかなり通すのがキツいので、ここまでくると通し間違える事も有りませんので一本ずつでも構わないです。

こんな風に全体がふんわりと組めたらいい感じ。 どこかのスポークが張りすぎたりしていたら緩めたりしていく。

 全てのスポークが通せたらよーく確認します。 編み込みをミスったりは割とあるあるなので、ホイールの振れ取りを仕上げてから一本組み直すと全てやり直しになりますので、よーく確認します。

リム裏からマイナスドライバー的なものでニップルを締めていく

 全てきちんと編めていたら張っていきます。 最初は欲張らずにまずそこそこのテンションになるようにニップルを回して締めていきますが、こういう作業は必ずバルブホールから順番に行います。 さもないといつ一周したのかわからなくなっていつまでもバランスよくなりません。 あと、一回で決めようとすると必ず一周する前くらいで締めすぎてキツくなって超アンバランスになりますので、ここは慣れもありますけど三周くらいで全体的に仕上がりの7掛くらいのテンションになるような気持ちで締めていきます。 でも多分、アンバランスになります。 大丈夫、誰にだって始めてはあるわ。

慣れてくるとこういう電動ドライバー的サムスンで高速に行いますがかなりアンバランスになります。 が、直せるのでヨシ! の精神です。

調整

 だいたい見た目も手応えもそこそこになったなあと思ったらまずセンター出しをします。 これは後でやると他のバランスを大きく壊しますので、最初に98%キメてしまうような感じです。

ここではSSTがないとかなり辛い。

 ハブアクスルの端部とリムのサイドまでの距離を左右から当て物をしてハブに対するリムのセンターを出します。 こればかりはPARKTOOL等のSSTがないとかなり辛いです。 ぼくは恐らく20インチしか扱わない故20インチ用の道具を使っています。 真ん中のネジを回して左右交互にあてがってどちらにどの位振れているのかを確認し、寄せたい方のスポークを全周締めます。 ニップルを半回転ずつくらいで様子を見ます。 例えば右側でピッタリに調整した計測器を左側に当てたときにだいたい3mm届いていない感じだとして、そうすると1.5mmリムを右へ移動させたいからハブの左側から伸びるスポークの先のニップルを全周、半回転締め込んでもう一度左側に計測器を当てたら2mmになっていた場合、残りは1/4回転ずつ左側のニップルを全周締めればだいたいいい感じになるはずです。 それを実行したら再度計測器を当て、リムとアクスル端をピッタリに合うように計測器のネジを回して調整し、反対面と比較します。 よければ次の行程へ、ダメなら繰り返しますが行きすぎた場合からまた行きすぎた場合を繰り返すとどんどん締まりすぎて行ってしまうのでなるべく少ない回数でキメるか、どうせ円周とリム振りを調整すると狂うので0.5mm位ならヨシとします。

チャイナ触れとり台。 これで0.01mmまで追い込めるので充分。 なければひっくり返したBMXのフレームでも大丈夫。

いよいよ振れとりっぽくなってきた

 リムセンターが出たら次は円周の振れとりをします。 ぼくはたまたまダイヤルゲージという1/100mmを測れる計測器を持っていたので使用していますが振れとり台の部品や、フレームのチェーンステーに結束バンドを取り付けていい感じに切り取りそれをアテにしてやっても公差の芯振れ±1mm、左右振れ±3mm以内なんて余裕で出来ますのであまり神経質にならないのがミソだと思います。 初めの頃はどうせ組んでもすぐに狂いますし。 そういえばこのあたりからリム外からのマイナスドライバー回しは固くて辛くなってきますので、ニップル回しを使用します。

工具においてはメーカー物志向なつもりはないけれど、色々試した結果これが一番使いやすい。 PARKTOOLのSW-2 3.4mm

 色んなサイズが使えるマルチなニップル回しは一見便利ですが何せ大量にニップルを回しますのでマジックで印を付けてもいちいちサイズを間違えてイライラしますので、ワンサイズのツールがいいです。 普段の軽いメンテならマルチサイズもいいと思いますが組みの時はワンサイズ。 間違いないです。

 そして各々用意した計測器をセットできたらホイールを回転させ、左右にうねうね振っているのは無視して芯振れだけを見ます。 計測器や結束バンドを調整し、回すとシャッシャッと擦るようにします。 シャッシャッのシャッの真ん中、恐らく一番出っ張っているところを捕まえて、判らなければ、シャの言い始め空言い終わりを確認してその真ん中のスポークを手で摘まみます。 お前や、と。 そこを一番締め込むのですが一本二本だけを締めるなんて事はしないで、摘まんだスポークから前後に全体の1/3ないし半分のスポークを締めますので、1/3なら36本中12本なので摘まんだスポークからざっくりと前へ6本、後ろへ6本くらいというイメージ、振れが大きく2mmとか振ってますよーって時は半周ほどなので18本なので前後に9本ずつ。 最大でもニップルは半周まで締めるを守って、摘まんだ所から隣とその隣くらいまでを半周締めると片側残り4本、のうち次とその次は1/4周、あと二本は1/8周、という風にイーズを利かせた感じに締めます。 摘まんだスポークから反対側も同じように締めます。 締めたら再度シャッシャッをして、締めていきますがこのあたりでだんだん締めるのが固くなってきて調整が困難になってきますので、あまりに固い部分が出てきたなと思ったら、もし一本だけめちゃめちゃ固いとかなら半周緩めてみたり、擦る一番出っ張っているところの反対側のスポークを同じ手順で緩めたりして、芯取りをしているときに全体のスポークテンションも揃えていく意識で調整していきます。
 公差±1mmってなってますので好きな人は無限に追い込んでもらったらいいと思いますが雰囲気でこのくらいなら判らんやろ、というか自転車のタイヤ自体がそんな高精度に出来てませんし、ビードの出具合で振りますから、まあ、そこそこでOKです。
 芯振れに諦めが付いたらもう一度、左右のセンターを見ます。 この時点で1mmとかなら無視して大丈夫です。 極端に言うとタイヤがフォークやチェーンステーに擦らなければ大丈夫です。 ダメならまた全周締めたり緩めたりして調整していきます。
 芯振れとセンターがだいたい追い込めたら左右振りを取っていきます。 また計測器を調整して今度は左右にシャッシャッってなるようにして、右に振っている部分と左に振っている部分を意識します。 この時点で何カ所もシャカシャカ擦る様ならおそらくバランスの悪い状態でスポークテンションが高すぎです。 振れとりの時は緩める方向で調整する気持ちで行きましょう。
 ここまで来たら手順は同じです。 シャッシャッの真ん中から調整しますが左右の振れとりは寄せたい方向のハブから出てるスポークのニップルなので一つ飛ばしになります。 芯振れの時も実際そうなのですが、一部の横振れを調整すると半周反対側に影響が出ます。 すこしずつ、1/2から1/4、1/8とやっていくといつまで経っても全体に収まる雰囲気が無いことに気が付くと思います。 なので最後の方は思ってる半分くらいずつ、そして最後の最後は締めオンリーで調整していきます。 
 左右振れが、公差±3mmとありますが納得行く範囲に収まったら一度振れとり台から外し、スポークテンションを全体的に確認します。

全部のスポークを摘まんで堅すぎたり緩すぎたりしないか見ます。

儀式

 摘まんでスポークテンションを見ていき、ここであまりにもおかしいなんて事はないと思いますが(そうだとそもそも振れは収まらない)、よければゴムハンマー🔨または準拠品でスポークをしばき回します。 

いい張り具合だとゴムハンマーが跳ねる感じがあります。

 ゴムハンマーなんてないよ~ って人はホイールのハブアクスルが地面に刺さらないように丸い痔主座布団のような、車のタイヤのような物を敷いて上からスポークを足で踏みまくります。 大丈夫、自転車屋のプロが言っていたし要はハブ穴やスポークの交差部の引っかかりを解除し有るべき位置に納める為の儀式です。 これをやらないと割と初期緩みが激しくすぐにアカン子ホイールに成り下がりまた調整する羽目になります。 
 スポークいじめが済んで気が晴れましたら、もう一度左右のセンターを確認し、芯振れを確認し、左右振れを確認します。 経験上、左右振れは少し出たりします。 センターや芯振れは神経質になるほどの影響は比較的少ないと思います。 ここからの締め込みで最終仕上げのテンションに持って行きますが、上記のニップル回しではそろそろ辛いかなあ? ってくらいに全体的に揃うような感じに仕上がると完璧です。 
 いいテンションで全て上手く組めましたら、フレームなり振れとり台なりの上で思う存分くるくる回して堪能してください。 ハンドスピナーなんていらんかったんや。 

コングラッチュなレーション

 お疲れ様でした。 あとはタイヤを組んで、ホイールに取り付けて、チェーンを掛けて、回してみてください。 初めて自分で組んだホイール、そんじょそこらのブランドホイールなんて目じゃないくらいにスペシャルです。 愛くるしいです。 多分すぐにまた振ってくるのですがもうホイールが振ったくらいどうってこと無いはずです。 バンバン練習してください。 調整の効いたホイールはシャッキリしていて技がキマります。 ぼくはそんなにたくさん出来ないですけど。 

バルブホールとロゴを合わせるとリムのデザイン部も揃う。 ホイールの表はスプロケットが付いている側が撮影側になるそうなので、メーカーロゴなんかの文字列はそっち側から見て読めるように組むと、出来る奴っぽいか完組みホイールにみえます。

 おそらく、今後も組み方はアップデートされていくでしょう。 手組みホイールのプロがブイブイ言わせている世界なので奧はもっと遠くにあるんだと思いますが、とにかく自分で組んだホイールはいいです。 尚、これだけを見ていきなり組み始めるのはやめて、あと何件かのホイール組みhow toを見てからにしてください。 重要部品なので、自己責任という逃げ句も忘れずに…。

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