みっかぼうず

 チーフ・ルーム・コントローラから「今日から日記を付けましょう」と発令されたので日記を付けている。
 書き始めて、日記には二つの効用があるなと気付く。
 一つは日記本来の備忘録的機能。
 もう一つは、筆記者の思考整理の機能。
 私は完全記録能力を持っているので、(記憶ではない。いつでも任意に認識再生出来る自身の能力をこう名付けてみた。因みにこれは口述筆記でこういうのは書いてて恥ずかしい、かっこ閉じる)こうして書いていて日記の備忘録的側面にはあまり意味を見出せない。
 一方、考えを纏めるツールとしてなら、日記はなかなか面白いと思う。(特に口述筆記では)
 いわば、自分の脳みそを取り出して手のひらに載せて見るに近い感覚を味わえる。
 日記についての日記は余りにメタ的で流石に日記らしくない。
 どうしよう。
 取り敢えず自己紹介でもしてみようか。
 読者を意識して書くようにとコントローラは日頃から言うがあれは私や彼女のことではなく、第三者の視点を意識すべしとの教えなのだろうと思うから。

 名前 ミキ・カズサ
 年齢 9地球標準年
 月生まれの島育ち

 そう、知ってるヒトは知ってる様に、私はあの悲劇かつ奇跡の赤ん坊、ミキ・カズサの成れの果てなのだ。
 知らないヒトはネットサーフした方が早いのだが、それでは自己紹介にならないので端折らず書こう。

 そう、初の地球・月往還型大型スペース・プレーン、「アルテミス01」による当時の最大規模宇宙災害はその初飛行中に起きた。以後同型、同航路はほぼ無事故で運行されている。
 乗員乗客全員死亡が報じられる中、奇跡は起こった。
 その奇跡が今のこの私、だ。
 ムーン・ベイビィだったこともあって、月の守護を受けたとも、久々にバチカンが即行で奇跡認定したのも(紀元前2年の時点から地球連邦は”破門”されたままだというのに、だ)とにかくそれは悲劇の中の唯一の明るい材料で、でも同時に両親死亡の孤児というどこまでも悲劇、でもあった。
 さっそく私を救う会が立ち上がり、その公式サイトは確か今でも稼動中で、だからググッた方が早いんだけど、結局父方の伯父叔母に拾われて義援金にも助けられすくすくと育って今に至るのことです。皆様有難うございます。

よし、ボリュームとしても一日の日記としては充分と認む。
今日はこれまで。

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