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『超勉強法』の英語学習法は正しいのか?

野口悠紀雄の『超勉強法』というベストセラーがあります。

1995年に単行本が出て、2001年の文庫化の時点で100万部が売れていたという。

現在までにどれだけ部数を積み重ねているのかはわかりませんが、相当なものだろうというのは予想できます。

実際すごくいい本。僕も高校生のときに読んでけっこう影響を受けた覚えがあります。

そして久しぶりに読み返してみたら、モチベーションが上がりました。


この本には英語学習についても書かれています。

その方法は教科書の丸暗記

従来の文法偏重型の勉強を分解モデルとして批判。そして単語を文脈から切り離して覚える方法も批判。

むしろ教科書を何度も音読して丸暗記すれば、普段の授業も受験も余裕で対応できるんだ、というのが著者の主張です。

実際、これは正しい勉強法だと思います。

第二言語習得論(SLA)でいうところの、自動化モデルからインプットモデルへの移行です。

日本の学校英語教育は自動化モデル(しかも自動化トレーニングをしない)。文法を重視し、まず頭で理解します。そしてそれに基づいた訓練を繰り返すことによって、流暢な英語が身につくはずだ…というアプローチ。

しかし研究によると、効果が大きいのはインプットモデルに基づく教育法のほうなんです。細かい理解は後回しにして、大量の英語をインプットしまくれというやつ。

教科書をなんども音読して丸暗記するというのは、はからずともこのインプットモデルを実践していることになります(モデル音声を使ってリスニングも鍛えるのが望ましい)


ただし問題もあります。

インプットモデルが成功するためには、「理解できる英語を」大量にインプットすることが必要なんですよね。

理解できない英語をインプットしても効果は出ないんです。

野口悠紀雄は頭のいい人ですから、おそらく授業をちょっと聞いただけで、あるいは教科書のちょっと読んだだけで、内容を理解できたと思われます。

だから教科書の英文はすべて理解可能なものであり、それを丸暗記することが自然と良質な大量インプットになった。

しかし少なからぬ普通の学生は、おそらく教科書の内容を完全に理解する段階で苦労していると思います。

このような学生が、まだ教科書を理解できていない段階で、それを丸暗記したらどうなるか?

何もしないよりかはマシでしょうけれども、野口悠紀雄のような成果はあがらないと思います。「理解可能な英語を」大量インプットするという原則に反しているからです。


『超勉強法』の英語学習法は方向性としては正しいけれども、対象読者のレベルが高めに設定されている感じはあります。

たとえば、音読による英文の暗記を説明したパートでは、「20回も音読すれば覚えてしまうだろう」と述べられています。

しかし20回で覚えられる生徒はよっぽど記憶力が突出していると思います。

少なくとも僕には無理。50~100回は音読しないと、ある程度の長さの英文は暗記できません。

このように、レベル感については違和感を覚えることは多いかと思います。読むさいにはここは注意しておいたほうがよいでしょう。

とはいえ内容の方向性自体は正しいので、だれが読んでも得るものは大きいです。


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