エンジニアの生成AIへの質問

 前回、事例として開発装置に関する質問を行いました。以下に回答の一部を掲載します。

質問
「電源投入後、装置を作動させると一回目のみ1エラーが発生しその後の作動では安定する課題の原因に何が考えられるか」

回答
「電源投入後に一回目のみエラーが発生し、その後の作動では安定する場合、いくつかの可能性が考えられます。以下はその一部です」

(1項か6項の内容については、別途、言及したいと思います。

「これらの可能性の中で、具体的な状況によって異なります。問題の特定には、具体的なエラーコードやメッセージ、システムの構成などを考慮する必要があります。システムや装置の詳細な情報が提供されれば、より具体的な助言ができるかもしれません。」


 ここで質問の仕方について考えてみます。エンジニアによく見られる特徴から探ってみたいと思います。

 エンジニアの性として「自己満足」が挙げられます。「あれも」、「これも」、とやたら詰め込んでしまう「足し算」の発想が強く現れ、己の技術(知識)を誇って自己満足に浸ってしまう傾向があります。匠も経験しましたが、そのために本質を見失うリスクに気付かないことがよくありました。
 また、理詰めに走り、厳格さを求めるあまり末梢的な問題に拘って、本質が何かを見失う事例もよく見受けられます。

 これらの特徴が悪いわけではありません。これらの特徴は、新製品の設計・開発に必要不可欠な要素だからです。要は使い方の問題になります。

 では、どうすれば良いのでしょうか。質問の仕方には大きく2つ考えられます。
1.広く捉えて絞り込む
 これは、質問したい事項の全体を俯瞰して、何段階のステップを踏んでピンポイントまで絞り込む方法です。
2.ピンポイントに絞り込んで質問
 質問者が条件を絞り込んで質問する方法で、質問者の意図(意向)が強く反映される方法です。

 結論から言えば、生成AIを活用するためには、1項の方法が良いのではないかと考えています。何故なら、生成AIは膨大なデータベースを学習しており、人間個々の知見を遥かに凌駕しているからです。
 2項の方法は、エンジニア個人の知見(経験)を活かして最終的な絞り込みを生成AIに委ねる考え方になります。そうすると、生成AIが学習したデータベースを活かしきれないことになります。
 1項の考え方は、まず生成AIのデータベースに委ね、エンジニアの知見では気付きにくい視点で新たな解決策を模索しようとするものです。途中の絞り込み、最終判断にエンジニアの知見を活かすことになります。エンジニアの知見は、経験に大きく左右されることは事実です。しかし、既知の知見に縛られてイノベーションが阻害されることも事実です。生成AIが提示する新たな視点は、エンジニアの育成にも役立つことも期待できます。

 さて、上記の「質問」及び「回答」は、「ChatGPT」を利用したものです。質問を記載する際、「1エラー」という条件をあえて付加しました。質問の主旨からすると末梢な事柄(エンジニアが拘り勝ちな罠)ですが、生成AIの反応を見るためにあえて付加しました。生成AIは見事にスルーしました。おそらく、生成AIは質問全体から不要と判断したのでしょう。
 ここに、生成AIに対する質問の仕方のヒントが隠されています。つまり、質問のキーワードに優先順位をつけ、優先順位の低いキーワードを省く(スルー)、引き算の発想も重要になるものと思われます。

①自分の質問したいことを纏める。(他人に読ませる必要はなく自由に纏める)
②キーワードを抽出して優先順位をつける。
③優先順位の高いキーワードで質問を纏め直す。

 優先順位のつけ方は、質問内容を他人に説明することを想定して考えます。以前、新人教育を担当した際、OJT後に新人に研修内容の説明を求めました。理解したつもりでは相手に説明できません。理解を深め、重要なポイントを把握させるために行いましたが、惨憺たる結果でした。自分を含め、頭で解ったつもりの底の浅さを実感させるものでした。
 今、直面している課題(本質)が何なのか、説明する相手に理解してもらうためのキーワードは何か、これらを明確にする必要があります。生成AIに対する質問も同じように考えれば、役立つ情報を引き出す可能性が高くなるものと考えられます。

 回答の最後に、「・・・システムや装置の詳細な情報が提供されれば、より具体的な助言ができるかもしれません。」とあります。このためには、最初の質問でいかに有益な情報を生成AIのデータベースから引き出すかがポイントになると思います。脈絡のない意味のない内容を闇雲に質問しても時間の浪費となりかねません。

 次回は、生成AIの6項目の回答内容から絞り込む方法について考えていきます。

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