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【生物工学部門】過去問 (2019年 III-1 持続可能な農業推進)

2019年 III-1 国連の持続可能な開発目標には、飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進することが掲げられており、ゲノム工学や食品機能工学、微生物・動植物細胞の育種技術などの生物機能工学技術を用いてこの目標を達成することが望まれている。
(1) 上記開発目標を達成するために利用可能な生物機能工学技術を複数挙げ、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(回答例1474文字)

【回答】
・持続可能な農業推進と生物機能工学技術
(1) 利用可能な生物機能工学技術とその課題
 作物の耐病性や収量、栄養価を向上させるため、遺伝子の編集・改変を行う「ゲノム編集技術」がある。たとえば、塩分耐性遺伝子を導入することで作物の耐塩性を向上させる。また、従来の畜産・漁業の環境負荷低減を目的として、「動植物細胞培養技術」による動物性製品(肉・魚・乳製品など)製造の研究も進められている。さらに、農地環境整備のため、微生物や植物等の生物が持つ化学物質の分解・蓄積能力を利用して土壌や地下水等の環境浄化を図る「バイオメディエーション」も注目されている。

課題1.コストの観点:ゲノム編集や細胞培養にはクリーンな実験環境や最先端の実験設備が必要であり、多額の資金が要求される。そのため、開発途上国や農村地域への導入が困難という課題がある。
課題2.技術的な観点:分子生物学実験は実験を担当する技術者の技量が反映されやすく、だれがやっても同等の成果品が得られるわけではないという課題がある。また、ゲノム編集技術では意図しない領域の遺伝子が発現してしまうオフターゲット効果のリスクも指摘されている。
課題3.安全性の観点:ゲノム編集や細胞培養で得られた成果物が野外環境に放出し、在来生態系に悪影響を与えるリスクが指摘されている。

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