風力発電について 少し知っておきたいこと
世界的な「脱炭素」化の流れの中で、ようやく日本でも有望とされる洋上風力発電の開発が本格化。でも、だからといって陸上での開発が終わったわけではない。そして、施設の建設計画が持ち上がるたびに周辺住民らのあいだで広がる不安要素の一つ、時に紛争にまで発展する「健康被害」には、風車との因果関係は無い。その点を強調しておきたい。
おさえておきたいのは、日本の環境省の「低周波音問題に関するQ&A」にある「Q10 風力発電から、低周波音が出て健康や生活環境に影響があると聞きましたが本当ですか?」の回答で、「 風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音(※)と健康影響について、現段階において、明らかな関連を示す知見は確認できませんでした」という見解。「風力発電施設から発生する超低周波音は、音圧レベルがそれほど高くなく、人間の知覚閾値以下」「他の環境騒音を比較した結果、風力発電施設から発生する音は、低周波数領域で卓越があるわけではありません」とあるので、日常生活において何ら問題は無いと言える。
これは、2009年以降に世間を騒がせてきた、いわゆる「風車病」「風車症候群」(wind turbine syndrome)には一貫して科学的根拠が無いということ。発端となった米国の小児科医ニーナ・ピアポント(Nina Pierpont)による自費出版本は、そもそも査読論文ではなく、聞き取り対象の選定やサンプル数など調査手法に致命的な問題があって、医学から再エネまで幅広い分野の専門家たちから厳しく批判されてきた。しかし、風力発電に反対する個人や団体などによってインターネット上で拡散されて、日本でも一部翻訳されたものが出回り、社会現象となった。
今日、SNS上で散見される、風車によって健康被害が起こるという投稿は、概ね当時のものが使い回されていることが分かる。とくにFBのような閉鎖空間では「疑似科学」があたかも事実であるかのように共有され続け、それが各地の風力発電の施設や計画、さらには太陽光発電のにまで攻撃材料として向けられている。そして、いつのまにか再エネが「自然破壊」「環境汚染」の象徴にすり替えられて、本来の原因であるはずの化石燃料や原発への問題意識が、日本ではもともと低かったにせよ、さらに薄れつつあるように見える。
目を覚ましてほしい。風力発電施設は「ウィンドファーム」「ウィンドパーク」と呼ばれ、各地にあるので、暖かくなるこれからの時期に一度は訪れてみては?噂やデマに振り回される前に、自身の目や耳で確かめてほしい。前向きになれる、いろんな発見があるはず!
参考:
風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会
http://www.env.go.jp/air/noise/wpg/conf_method.html
Wind Turbine Syndrome: A Communicated Disease
Chapman, Simon
Crichton, Fiona
https://ses.library.usyd.edu.au/handle/2123/17600