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にじのはしを渡る妻

 令和3年3月21日、長年連れ添った妻に旅立たれた。延命装置が全て外されると、ピーという音とともに病床に虹の橋が架り、寂しそうにこちらを振り向き、振り向き渡る妻が見えた。そんな気がした。

 私達が出会ったのはバブルとよばれる高度経済成長期。物はどんどん作られ、人も溢れ、しかし就職先にも困ることはなかった。  空からはお金が降ってくるようにすら思えたものだ。

 そんな経済成長のど真ん中……。巨大なビルが建ち並ぶ新宿。……の地下。          

 私と妻は「キャット・ファイト」で出会った。妻はアイドルレスラーで、私は極悪レスラーで生粋のレズビアン。その頃を思い出しただけでも脳汁がドバドバと溢れだしてくる。お前の割れ目にチェーンを食い込ませてクリトリスをガシガシ責めたっけな、ピンクローターでアヘアヘいわせてやったっけな。ニヤける土地転がしの金持ち連中よりも、私は嫌らしい笑みを浮かべていたと思う。

 あいつらみたいに私もお前の顔にドバっと「精子」をぶち撒けたかったものだ。出ればの話。 ……ば!の話よ!

 ビアン同士養子縁組だったけどお互い、よくおばあちゃんになるまで来れたよな。もうすぐそっちいくよ。あっちでまたキャットファイトやろうな。あっちで寂しくないように、棺桶にはお前が隠しもってた欧米のパッキンねーちゃんの無修正ポルノをいれてやるよ。

 

 

 

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