内視鏡専門医試験過去問ノート⑥2022年7月の過去問考察(総論+上部)
最新の2022年7月の消化器内視鏡専門医試験過去問についての考察です。
2022年7月の出題数は
・総論:18問
・上部・小腸:35問
・下部:29問
・胆膵:18問
計100問でした。
CBT方式での出題ですが出題内容、出題順、選択肢は全受験者同じだったようです。
2022年7月も2月に引き続き新問や難問が比較的多い印象でした。
次回2023年7月の出題予測にあたり最新の過去問内容を把握することによる得点増加効率は高いと考えます。
目次が表示される前の無料公開部分に本文サンプルを一部掲載します。
★本記事に掲載されている内容を全て印刷可能なPDFを本文末尾に掲載しています(パスワードあり)。ぜひ印刷してご利用ください。
・本記事では総論18問+上部・小腸35問の計53問について掲載しています。ただし実際の内容を類推する内容が含まれ、また全ての設問について詳細な選択肢再現や解説・考察ができているわけではありません。予めご了承ください。
・目次と無料公開部分の関係で、見出しの設定は途中からとなっています。
・書籍の関連ページは下記のように省略して表記します。
例:5-155=「解答と解説 第5版」p155
例:ハ-104=「消化器内視鏡ハンドブック」p104
1:超音波内視鏡について正しいものを1つ選べ
a 一般的な細径プローブで用いられる周波数は5MHz〜7.5MHzである
b ラジアル型のエコープレーンは、スコープの軸に対して平行に設定されている
c ラジアル型EUSには直視型と前方斜視型がある
d 超音波内視鏡による観察時は胃内で十分に送気する
e 超音波内視鏡で固有筋層は高エコーである
【解説】
超音波内視鏡に関する設問は近年総論範囲で1問は出題される傾向ですが、毎回少しずつ選択肢が変わってくるのでEUSに馴染みがないと正答率はやや低いようです。この範囲、ハンドブックや過去問の解説文に記載されていない内容が問われることがあり総論範囲の中では対策しづらいです。
「EUS機器の周波数」や「エコープレーンとスコープ軸の関係」などは繰り返し出題される可能性が高いのでよく覚えておきましょう。
<類題>5-12、5-15
a:
一般的に細径プローブで用いられる周波数は12MHz~30MHzであるのに対し、超音波プローブが一体となったEUS専用機では5MHz~12MHz程度です。超音波では周波数上昇とエコー減衰が逆の関係を示すため、大きな腫瘍性病変の評価に周波数の高い細径プローブは不向きです。
病変が10mm以上の厚みを有する場合、細径プローブではエコー減衰のため病変深部の描出が不十分となることが多いのでEUS専用機が適しています。
(参考:消化器内視鏡学会雑誌巻末の「問題とその解説」第286回(64巻1号):2019年度出題)
b.
ラジアル型のエコープレーンは、スコープの軸に対して直角です。
コンベックス型のエコープレーンは、スコープの軸に対して平行です。
c.
結論から言うとコンベックス型EUS、ラジアル型EUSいずれにも前方斜視型と直視型があります。この「前方斜視型と直視型」に関するまとまった記載がハンドブックにも過去問にも見当たらず、試験後の受験者からの情報をみているとこの選択肢を除外できなかった方が一定数いました。私自身は大規模施設でのEUS経験が少ないのでこれが一般的な知識なのか分かりませんが、受験者目線で資料を作っている私としてはハンドブックか過去問解説で知識を網羅できるようにしてほしいところです。
以下に参考文献を載せます。コンベックス型EUS、ラジアル型EUSそれぞれの前方斜視型と直視型のスコープの実例です。
d. こちらも選択肢cと同じく、EUSの挿入についてまとまった記載がハンドブックや過去問に見当たらず、少し的外れかもですが参考文献の一つとして超音波内視鏡(EG-580UT)の添付文書を載せておきます。
上記の通り過度な送気は塞栓症のリスクとなります。またハンドブックp446の「スコープの挿入」の項も参考になるかもですが、胃粘膜全体を観察する時を除いて「胃内で十分に送気」する操作はスコープのたわみが生じやすく送気自体患者さんの苦痛につながるため、専門医試験の選択肢として正解になることは少ないと思って良いでしょう。
e:
胃壁や大腸壁を例にすると、超音波内視鏡で
第1層(高エコー層)+第2層(低エコー層):粘膜層(M)
第3層(高エコー層):粘膜下層(SM)
第4層(低エコー層):固有筋層(MP)
第5層(高エコー層):漿膜下層~漿膜(SS-S)
に対応しています。
よって選択肢eの「超音波内視鏡で固有筋層は高エコー」は誤りです。
以上より、正解はcとなります。
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