見出し画像

5章-(2) 続植物の話とターンハウズ

(11)「ケシ」= poppies →→山に咲くポピーは黄色、野のポピーは赤い   とのこと。バスの窓から見たのは、たいてい赤一面のポピーだった。風に 揺れるさまは可憐。

(12)「イラクサ」= nettle →→フットパスのいたるところに生えていて、触れるとまもなく、皮膚がただれ腫れてヒリヒリ痛む。日本ではあまり見かけない草だ。バーバラに注意されて気をつけたのだが、それでも、道の両側に迫って生えているので、数人が被害に遭った。 (ポターの『リスのナトキンのおはなし』で、なぞなぞとして登場。アトリーの『グレイ・ラビット』にも)

(13)「スカンポ・ギシギシ」= dockleaf →→イラクサの被害にあったら、この草を揉んですり込むと痛みがとれる、と教わった。実際、ふしぎにイラクサの周辺には必ずスカンポが生えていた。触れた人たちが、さっそく試してみると、まもなく痛みは軽くなったそうだ。

(14)「スイカズラ・ニンドウ」= honerysuckle, woodvine →→5~6月に咲き、香りがいい。白から後に黄色に変わるので「金銀花」ともいう。(アトリーの『グレイラビットのおはなし』の中で、主人公のヘアがスイカズラを1本折って、頭のまわりに巻いている描写と挿絵がつけられている)


スイカズラ・ヘアの頭に巻いて

(15)「ヒース」= heath →→ 7月末から8月に咲く。荒れ野一面を覆うヒースがムラサキ色の花を咲かせる場面は、児童文学だけでなく、イギリスの作品にはよく見かける。
『嵐が丘』『シャーロックホームズ』などにも。

(16)「トネリコ」= ash tree →→ 鈴のように実が幾つも細長くぶら下がり、振ると音がする。大木になる。ヒイラギ科の落葉灌木で、幹は強く固く、農業用のレーキやクワにされたり、薬用にも使うそうだ。

(17)「クロイチゴ・キイチゴ」= blackberries = brambles →→ 8月に実。ジュースやジェリー、ジャムにする。

(18)「シャクナゲ」= rhododendrom →→ ツツジ属。ツツジ、シャクナゲ、サツキとも言う。ラテン語、ギリシャ語から。

(19)「ミヤコグサ」= yellow betch →→ 黄色いマメ科のかわいい花を咲かせる。

(20)「アザミ」= thistle →→ スコットランドの国花で、メアリー女王の花とも言われる。ムラサキ色の花をつけ、棘がある。内側の苞 (ほう) が、悪天候になる前に自然と閉じるので、ヨーロッパでは天候予知のために門口に植える。

他にもバラはたくさん、スモークツリーも見たし、コパービーチ(=銅色のブナ)は、グリーンノウの庭にも生えていた。

● 道中で、もっとも景色の美しいと言われる「ターンハウズ」でバスを降り少し歩いた。ガチョウやカモ、アイサなどが群れていて、私たちを見ると、寄ってくる。宿の置いてきた昨日のランチの残りを持って来れば良かった、と口々に言い合う。あたり一面、糞だらけで、うっかりすると悲鳴を上げることになる。

●「ターンハウズ」というのは、人工の「自然庭園」なのだと、英文パンフでわかった。19世紀にこの670エーカーの土地を買い取ったジェームズ・マーシャルが、30年かけて、4000エーカーを超える所領地に増やし、周辺
一帯の景観を大きく変えていった。初めはだだっ広い山と盆地に過ぎなかったが、トム・ギル川をせき止めて、盆地に水をあふれさせ、現在の「ターンハウズの湖と島々」を出現させた。島には、トウヒ・マツ・カラマツ・シャクナゲ・ナナカマドなどを植えた。このターンハウズは、19世紀英国風自然美の考え方を反映している実例なのだそうだ。

● 1929年にこの土地が売りに出され、ポターが買い取って、半分をナショ  ナルトラストに売り、残り半分を遺言によって、トラストに譲渡した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?