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2章-(4) 6/18 ボストン・マナーハウス

◆旅程:(1)ボストンのマナーハウス訪問
    (2)グレートシェフィールドのトムの舘訪問
    (3)イーリー大聖堂見学

●  低血圧で朝寝坊と触れこんでおいたのに、4時半、5時半と目が覚める。興奮状態が続いている。太極拳をゆっくりやって体をならす。同室のSさんは元気いっぱい、テキパキ動いてお茶をいれてくれる。私が手造りした梅干しをおいしい!と感激してくれて、部屋が変わることになっても、食べさせてね、だって。

今朝も雨模様で、涼しそう。洋裁師の妹にあつらえてもらったリバーシブルジャケットの上に、レインコートを重ねる。朝食前に、SさんとHさんの  3人で、町へ出かけた。市場は8時半からで、まだ開いていなかった。

Hさんが急に思い出して「Sさんと私は食糧調達係に決まってたのを、忘れてた。今夜のを何か探してみましょ」と言った。

果物と野菜のある八百屋を覗いていたら、8時前なのに開けてくれた。  トマト、リンゴ、キュウリなど買う。キュウリはひどく太く長い。ニンジンはすごく細く短いのが束になっている。リンゴは種類が多く、料理用のしぶいのもあるそうで、小粒で値は安い。

パン屋にも回って、できたてのパンを思いきりたくさん買った。それでも 1200円と1000円ほどで済んで、8人分としたら、安い買物だった。

●  ホテルの朝食を終えて、部屋を出る前に、枕元にSさんと2人で1£置いた。(夕方戻ってみると、少し位置を変えてそのまま置いてあった。「チップは不要」の印だった)

◆9時出発。吉松氏が沿道の説明をしてくれる。イーリーの町は、昔オランダ人が干拓して町を開いた。最初は穀物がとれず、ウナギ(=eel) を主食にしていたので、Ely (イーリー)となったそうだ。ウーズ川が近くを流れている。

●  バラ園があちこちの庭に見える。赤いポピー、牛、馬、豚、たくさんの羊、12~3世紀頃建てられた教会が、あちこちに見え、いかにも古いイギリスの風情をそのまま残している。

ジャガイモ畑、ラデイッシュ畑、サラダ菜畑と続く中に、カラフルな服を 着たカカシが銃を捧げて立っていて、かっこいい!絵本で見かける日本定番のカカシは、着古して破れもみえて「わび・さび」の体現のような気がしていや、違うな。ゆとりのない貧しいふところ具合を、反映しているにすぎないのかも・・。

麦畑、アザミの大群、平らな川ーーつまり、川水と土手の高さがすれすれで、あまり段差が無く、川があふれればすぐにも一面の湖になりそうだ。湿地帯に牛の群れ!

地図にない「サットンの町」を抜け、「イリアスの町」も通った。

「ブラックバード」を何度も見た。ムクドリほどの大きさで、カラスより小型だが、全身真っ黒。イギリスの絵本や物語によく登場する鳥だ。

信号はほとんどなく、まっしぐらに「ボストン・マナーハウス」のある、ヘミングフォードグレイの静かな村に、1時間もかからず到着した。

◆◆「ボストンのマナーハウス」では、現在の舘の女主人のダイアナさん(=ボストンの息子さんのピーター・ボストンの妻)が迎えてくれた。ピーターは『グリーン・ノウ物語シリーズ』の挿絵をすべて描いた人だ。

この屋敷は868年も前に建てられ、かつてボストンが船で川下りしていて、この屋敷にひと目惚れして、買ったのだという。

北側から見た「ボストン・マナーハウス」


1時過ぎまでの3時間あまりを、館内と庭園を案内してもらった。大雨が降ると、すぐそばのウーズ川があふれて、庭先まで水浸しになるそうだが、ごく最近の4月にも大雨が続き、近隣の67軒が水浸しになったそうだ。『グリーン・ノウの子どもたち』の冒頭のシーンの、トーズランド (=トーリー)少年が洪水の中を、屋敷を訪れる場面を思い出させられた。

●  私たち全員が、ルーシー・ボストンの作品を読んでいることに、ダイアナさんは感銘を受けたようで、2階の音楽室で、ラッパ型蓄音機で一曲聴かせてくれた。

1930 年代のEMG蓄音機とかで、竹の針を用いるため、毎回削らねばならず、維持は大変。音量調節ができないので、うるさい時は、put a sock in it 靴下を突っこんで音を鎮めるのだが、ラッパの穴が大きすぎて、靴下ひとつではとても埋まらない、と笑わせる。

1970 年末までBBCの音質テストに、この蓄音機が使われた。聞かせて頂いたHenry Hal という歌手は、存命なら百歳を超える人だそうで、軽快な楽しい曲だった。

●その後、屋根裏部屋に案内された。物語に登場する品々がどっさりあった。木馬、木箱、瀬戸物の犬、鳥かご、黒たんのネズミなど。おもちゃ箱からは、トービーの剣、スーザンのビー玉、アレクサンダーのフルート、ドミノ、ロシアの人形など、グリーン・ノウの物語に登場する主人公達が、使い愛した品々だ。ボストンは、トーリーがこの屋敷に昔住んでいた子どもたちとの触れあいを、細かく描くことで、昔の人達の思いは、今も続き繋がっているのだと考えているようだ。
 

屋根裏部屋の木馬、たてがみは本物、ダイアナさんと


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