母と娘

病と恋愛事情 四話 友人と子ども

 高校時代から仲良くしている友人が子どもをつれて俺の家に遊びにくる。でも、本音はかなり疲れているから今度にしてほしかったが。

#小説 #病と恋愛事情 #友人と子ども #父親のような存在

                 二

 俺は高校時代から仲良くしている友人がいる。そいつからこの前連絡があり、予定では確か今夜遊びにくると言っていた。と、そのとき携帯がうなりをあげた。

『もしもし、麻沙美?』
「うん、あたしだよ」
『今夜、来れるんだろ?』
「うん、さくらも連れていっていいでしょ?」
『ああ、もちろんだ。連れてこいよ』
「今から行っていい?」
『ああ、俺は構わんよ』
「わかった。じゃあ、さくらの用意が出来次第いくね」
『待ってる』
「じゃあ、のちほど」

麻沙美とは同級生。その娘がさくらちゃん。高校一年生。どうやらボーイフレンドはいるようだ。くわしいことは知らないが。

多分二人は一時間くらいしたら来るだろう。なんせ、年ごろの娘さんがいるから、身なりに時間がかかると思う。俺の家に来るのにそんなにきちんとしなくてもいいと思うのだが。まあ、仕方がない。いつものように待つか。

家のなかが散らかっていたので、俺は片付けを始めた。

 三十分くらいした後、茶の間の片づけもだいたい終わらせたので、あとはトイレ掃除だ。女二人が来るから臭いままにはしておけない。面倒だが。

 今日はかなり疲れているので、また今度にしてもらいたかった。でも、さくらちゃんがどうやら俺に会いたいらしい。彼氏より会いたいのだろうか。

冗談は別として、麻沙美の娘さんに好かれるのは嬉しいようなそうじゃないような複雑な気分だった。まあ、さくらちゃんとしては俺のことを父親のような存在と思っているのかもしれない。本人に聞いたことはないけれど。

麻沙美の家は母子家庭。彼女は夫と三年前に死別している。どうやら昼間から酒を飲んでいたらしく、肝硬変になって最期を迎えたようだ。

 麻沙美に今、彼氏はいないようだが、再婚は考えているのだろうか。きっと、今はしないだろう。せめて、さくらちゃんが社会人になるまでは、と俺は思っている。

きっと、さくらちゃんも、血のつながらない父はそう簡単に受け入れられないだろうから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?