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死と出会い 11話 冷たい態度

店を飛び出した愛理から電話がきた。彼女は謝っていた。食べものと飲み物をがっつく愛理を前に絵里ちゃんの話をすると急に態度が変わる。

#小説 #死と出会い #連絡 #謝罪 #元気回復 #冷たい態度

 愛理が突然、飛び出して少ししてから僕のところに電話がかかってきた。
『もしもし、愛理?』
「……秀一。さっきはごめん」
『いや、いいけど急にどうしたんだよ。らしくないぞ?」
「ん……。絵里は?」
『帰ったよ。体調悪いからって言って」
「そっか、今、秀一まだマックにいるの?」
『いるよ、来るか?』
「うん! 行く! 近くにいるからすぐ行くね」
急に愛理は勢いづいた。どうしてそんなに態度がコロコロ変わるのだろう。
「わかった」
言ってから僕は彼女が来るのを待つことにした。

 二、三分待って、愛理はさっきよりもびしょ濡れになって入店してきた。
それを見た僕は、やるせない気持ちになった。同時に、哀れんだ。僕のいる席に来て、
「さっきの僕の一言、傷ついたか?」
と、聞いた。すると、
「ううん……。私が悪いの。秀一や絵里にも嫌な思いさせちゃったし」
と、呟いた。
「愛理、ずぶ濡れだぞ。風邪ひくから何か温かいもの注文してこいよ。髪だって濡れてるし」
「そうね、ありがとう」

 彼女はハンカチで髪を拭き、カウンターに向かった。混んでいるせいで戻ってくるまでに少し時間がかかったけど、
「ホットココアとチーズバーガー頼んできた」
と、笑顔で言いながら僕の目の前に座った。彼女からほのかにやわらかい感じのするコロンの匂いがした。口には出さなかったけれど、いい香りだあと思った。

 愛理は、
「絵里、大丈夫かなあ……心配」
と、言った。
「今時期、インフルエンザってこともないから、風邪じゃないのか」
「それならまだ、いいんだけどさあ」
「栄養とって、薬飲んで寝てりゃ治るよ」
彼女は急に笑い出した。
「どうした?」
「秀一、あんまり心配してないのね」
「そんなことないけど。でも、結局そういうことなんじゃねーの?」
「まあね」
愛理はまだ笑っている。そんなに面白いことを言っただろうか。

 と、そのとき店員がやって来て、
「おまたせしましたー。ホットココアとチーズバーガーです」
「あ、すみません」
「ごゆっくりどうぞ」
営業スマイルを浮かべながら店員はそう言ってから去っていった。

 愛理は目の前に食べ物と飲み物を出されて、俄然やる気がでたようだ。
「よっしゃー、食べよ!」
と、言いながらチーズバーガーにがっついた。
「うん! おいひい!」
「飲み込んでから喋ろよ、仕方のないやつだなあ」
僕は、元気になった彼女を見てホッとした。
「秀一はもう食べたの?」
「ああ、食べたよ」
「何、注文したの?」
「ビッグバーガーとコーラ」
「へー、さすが男子! よく食べれるね」
僕は考えごとをしながらしゃべっていた。

「思ったんだけどさ」
「うん?」
夢中になって食らいついている愛理は上目遣いでこちらを見た。
「絵里ちゃん、風邪治ったら会ってくれるかな?」
愛理は食べるのをやめてこう言った。
「それは、私に聞いてもわからないよ。今度、本人に聞いてみなよ」
急に冷たい態度。どうしてだろう。
「わかった。帰り送るよ」
「いいよ、別に。絵里がいるんだから優しくしないで!」
今までの愛理とは違う。なぜだ。僕は、わからなかった。 

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