感涙

死と出会い 21話 感涙

校門の前で麗香先輩を待った。まだ、返事をしていないことがあったので。

#死と出会い #21話感涙 #小説  

 授業と掃除が終わり、麗香先輩は何をしているのかな、と思った。彼女は、自分がバイセクシャルだということを言って、しかも好きな女の子がいる、でも僕にも興味があると言っていた。今後、どうするかの返事がまだだったので伝えるために校門で待つことにした。その前に体育館に様子を見に行こう。部活動があるのかどうかを。

今日は多分バスケ部の活動は休みだろう。バレーボール部の男子と女子は活動していたからそれ以上体育館は空きが無くて使えない。この高校はスポーツよりも勉学に力を入れているのか体育館が狭い。だから、一度に一部活の男女しか活動が出来ない。

スマホをバッグから取り出して時刻を確認すると16:00と表示されていた。ジャストの時間を見るのは久しぶり。空は晴れ渡っていて、雲ひとつない。快晴というやつ。それにしても麗香先輩は何をしているのだろう。授業や掃除は終わっていると思うけどなかなかやって来ない。もしかして今日は学校を休んだとか? 連絡先ももし交際出来たら交換しようと思っていたから今はわからない。自宅も知らないし。四時半まで待って来なかったら今日は諦めて明日にしよう。そう思っていた矢先――
玄関からお目当ての人がやって来るのが見えた。向こうはまだ僕の存在に気付いてない様子で下を見ながらゆっくりと歩いている。僕は自分の伝えたい思いが強くなり、こちらからも歩きながら叫んだ。
「麗香先輩!」
彼女は僕の声に気付き、笑顔を見せた。
「あ! 秀一君」
僕は手を振りながら彼女の前で止まった。少しだけ弾んだ息を整えるように両膝に両手を付いて屈んだ。
「そんなに急いで大丈夫?」
彼女は優しく言った。僕は、
「大丈夫です、」
と、そこで止め、頭を上げて再度話し出した。
「この前の返事がまだだったんで待っていました」
麗香先輩は、何かに射抜かれたような顔をした。
「あ、うん」
「麗香先輩に好きな女の子がいるのは知っています。でも、麗香先輩さえいいのであれば付き合って下さい!」
彼女はみるみる表情を変えていった。そして、
「はい、こんなんでよければこちらこそよろしくお願いします!」
僕はその返事に体の力が抜けていくのがわかった。
「よかった……」
そして、感極まって涙した。
「秀一君、そんな……泣かないで」
「だって……ずっと憧れてたから」
「そうなんだ。それは知らなかった」
「この前言ったのか初めてだったっから」
僕は体をまっすぐにし、
「これから、よろしくお願いします」
と、改めて言った。麗香先輩は微笑みながら頷いていた。

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