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紀伊國屋のプリンよりもプッチンプリンの方が美味しいことだってある

//まずい、と思ったということは心当たりがあったということで、実際それに間違いはなかった。相も変わらずわたしは週末は人と会いに外へ出ていて、だから研修先から帰った時に発熱が発覚した時は血の気の引く思いだった。

//そう思うなら出かけなければいいのにとは思う。でもそんなことを続けていたら、その前に日々の暮らしのストレスに耐えかねて倒れてしまう。そのどちらがマシなのかわたしにはわからなかったし、対面研修と通勤が許されて他人とのサシエンカが認められないのは理不尽だと思っていたから、わたしはそれをやめる選択には至れなかったのだった。閑話休題。

//わたしは本当に無知なので全然知らなかったのだが、わたしの住んでいる自治体はけっこう優秀なようで、翌日には検査を受けることが出来て、その一時間後には『今流行りのウイルスとあなたの発熱は特に関係ないようですよ』との報をうけた。

//母はやっぱりね、という顔をし、「あんたが夜中に吐いた時からそうだと分かってたわよ。これは完全に胃腸炎ね」と謎のキメ顔で言い放って去っていった。そんなことを思っていたならもっと早くに言って欲しい。お前の娘のネガティブ思考は誰譲りだと思っているんだ。少なくとも父ではないぞ。

//毎年忘れて、忘れた頃にやらかす恒例行事として、胃腸炎に倒れるということがある。学部生の頃焼き牡蠣を家族4人で食べて僕1人だけが嘔吐に死んだくらいのことは牡蠣だからまだともかくとしても、三年の秋に40度近くまで発熱するに至ったものは結局原因不明のままだった。 

//そんな訳で、流行りのウイルスかと思われた僕の突然の発熱は、毎年恒例の胃腸炎であると明らかになったのだった。

//……ここで「めでたしめでたし」で終われれば良かったのだが、僕の地獄はここから始まる。なんとよりによって『血祭り』が始まってしまったのだ。


//血祭り、ケチャップ、お月様、女の子の日、まあ表現はなんでも良いのだが要は月経がやって来たのだった。血の気が引いたのは貧血のせいかもしれない(物理か?)。

//しかも毎度ランダムに発生する(と僕は思っている)症状はよりによって『腹痛』だった。二日目に当たる金曜日はこの痛みで目が覚め、一日中苦しみ続けていた。他人のツイート通知でスマートフォンが鳴るのが煩わしく、アカウントを2~3個一時的に削除したほどだった(どうしてそんなにたくさんアカウントがあるのかは聞かないでください)。

//斯様に苦しんでいる娘を見兼ねて、心優しい父は仕事帰りに紀伊國屋のプリンを買ってきてくれた。わたしが嘔吐して丸一日何も食べられなかったとき、「プッチンプリンを食べたい」と母に零したのを伝え聞いたのだと思う。

//ご厚意に甘えてそれを食べたのだけれど、あまり美味しいと思えなかった。はやりの味覚障害とまでは言わないが(陰性だったし)、そもそもこうして体調を崩している時は大抵味覚がバカになっている。繊細な味わいの卵プリンはまだわたしには早かったのだ。

//次の日に母がプッチンプリンを買ってきてくれて、わたしはそれを食べた。とても美味しかった。平時に食べると甘過ぎると感じる食べ物ではあるので、やはりまだ回復はしていないのだなぁと感じながら、わたしはその至福のひと時を楽しむことにしたのだった。

//紀伊國屋の美味しいプリンの賞味期限はあと1日。それまでにはちゃんと回復して、次こそあのプリンを美味しく頂きたい。

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