3がつ30にち(火)

一日中寝ていた。夕方に起きて、他愛もないテレビ番組を見た。起き上がるのがむずかしい。

たくさん夢を見た。
かなしくて、一緒にいる人の気を引きたくて、死にたくて、走って逃げる。階段を飛び降りながら下って、また階段を飛び上がりながら上る。果てには海があって、酒を飲んでいる人がいた。
3人でラブホに入って、ひとりが風呂にはいる。ぼーっとして、次に入る。風呂のお湯が溢れて、トイレの便器をのみこんだ。浴槽はピンクに光っていた。私は妊娠していた。

やっと起き上がって、トイレにいく。身なりを整えることができたので、カフェにいくことにした。ヴィルジニデパントの『バカなやつらは皆殺し』と、バロウズの『おかま』、どちらの本を持っていくか悩む。『バカなやつらは皆殺し』をぱらっとめくって、なんとなく後者にすることにした。前者は読んだことがあって、大好きな本だけど、読むと酒がのみたくなってしまう。後者は読んだことがなかった。 

でかい柄シャツにブルーグリーンのタイツ、ショートパンツを履いて、黒いヒールにした。ヒールのある靴は好きだ。不器用な感じも器用な感じもあって、振る舞いを規定する力がある。それと戦うのが好き。

本を入れるものがなかったので、手にもって外に出た。

行きに煙草を買った。ピースのアロマインフィニティを、はじめて買った。

カフェには喫煙ブースがついていて、席では吸えない。近くに席で煙草が吸える喫茶店もあるが、はじめて吸う煙草の匂いがもしきつかったら居づらくなるので、喫煙ブースのほうにした。
店内にははじめて会うらしい妙齢の男女グループがいてなにか真面目に話している。なんとなく入社してすぐにあったビジネスマナー講習を思い出す。講師は50代くらいの女だった。なにか重要なことを話すような口ぶりだったことは覚えている。

本を読む。まえがきが長くて本編が待ち遠しい。煙草が吸いたくなる。あと何ページまえがきがあるのか確かめながらやっと読み終えて、煙草を吸った。軽めで好きな味だった。名前がアロマだけど、くどくないのがよかった。

少し本を読み進めると、店にまた別の妙齢の男女グループが来た。なんの集まりなのかさっぱりわからないが、通路をふさいで真面目に話していた。避けて煙草を吸いにいったら、喫煙ブースにも電話で真面目に話している人がいる。占拠された。帰ることにした。

交差点までいくと、サックスの音がきこえる。最近毎日、高架下で吹いている人がいる。スピーカーみたいになってよく響く。酒を飲む人が盛り上がる。音がきこえる。音がきこえる。

化粧水を買ったビニール袋に本を入れた。夜ご飯を買わなければならないが、食べたいものなんてないのだ。食べたいものなんていつもない。とりあえず寿司を買って帰った。

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