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思い出のように悲しくても

読んだ本のこと

ティファニーで朝食を
トルーマン・カポーティ
村上春樹 訳


自由奔放でそれゆえに傷だらけになってしまう女の子に惹かれてしまうのも、強く風の吹いた後のように生きていくしかないのも、戻れない過去のように悲しい。
でも、さわやかでよかった。冬、ドーナツを食べながら読んだのを覚えています。

やわらかなレタス
江國香織

いくらでも食べられるみずみずしい果物、もうなくなってしまったお店のスイーツ、そういう食べ物に対する記憶や想い、食べ物たちとのエピソードを綴ったエッセイ。「ニューヨーク・大雪とドーナツ」が特に好きです。スターバックスのチョコレートドーナツは本当に美味しい。江國香織のエッセイは、どんな精神状態でも読むことができます。

世界の終わりという名の雑貨店/ミシン
嶽本野ばら

「ミシン」に収録されている「世界の終わりという名の雑貨店」はずっとずっと忘れられない小説です。
列車にのって缶入りのミルクティを飲みながら読むのが一番良いです。列車に乗って、ミルクティをのみながら、あてのない儚い逃避行をした二人に想いを馳せることができます。

 おそらく作中に出てくる紙石鹸はこれかな……と思ったので、問屋買い。去年の4月で生産終了になったそうです。知ったばかりなのに寂しい。

ミシン2/カサコ
嶽本野ばら

「ミシン」の続編。ふたりがふたりで居続けてくれてよかった。続編があることを知らずに前作を読んでいたのも正解でした。

下妻物語
嶽本野ばら

友達なんていらない、一生一人で好きなお洋服だけ着て死んでいくと決め込んでいる桃子が、荒っぽくそれでいて乙女な心も持つイチコに惹かれていく描写がすごくよかった。
BABYのお洋服が着たくなります。映画も大好き。個人的に最後の一文の有無で映画と小説の印象が変わるなと思いました。

ミラノの太陽、シチリアの月
内田洋子

筆者がイタリアで出会った人々の「光と陰」を記した随筆集。
人生そのものはどんな物語よりも劇的なのかもしれない、と思ってしまった一冊でした。あらゆるさようならを繰り返して、それでも続いていったたくさんの人の記憶が詰まっている文章。
息苦しくなるほどに切実で、切実なまま淡々としている。自分の体や心がすっと澄んでいくような感覚をくれる、これからも大切に読みたい本です。

すきまのおともだちたち
江國香織

「私たちをほんとうにしばるのは、苦痛や災難や戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの」という一文を思い出すと、ぞっとすると同時にかろやかに歩き出せるような気がします。


青い本たち

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