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5.おおまかな流れについて

これまでいろんな額装作品を作ってきました。大きな額装から小さな額装、箱型にした立体の額装、変わったところだと本のかたちに額装を仕上げたこともあります。いろいろな額装の方法がありますが、大きさや技法に関係なく、おおまかな流れはだいたい同じです。とっかかりとなるのが額縁からなのか、中に入れる作品(カードなど)なのか、それともマットに貼りたい紙なのか。そのようなちがいはありますがそれさえ決まっていればその後の手順はほとんど変わらないです。

少しちがいがでるとすれば、サイズによって作りやすさや作業場の大きさが変わることでしょうか。額装のサイズが大きくなればなるほど大きな場所が必要となります。逆に小さい作品なら小さなテーブルで手元だけで作ることもできます。ただそれはサイズだけの問題で、基本的な工程はそれほど変わらないと思ってもらってけっこうです。

やや乱暴にまとめると額装の作業は中に入れる作品をもとにそれに合う額縁と技法を決めて、自分なりの設計図を書き(既製の額を使う場合)、それをベースにして紙を切ったり貼ったりしてマットを作る。それとは別に裏板を作っておき、ガラス(またはアクリル板)とマット、作品を貼った台紙に裏板をひとまとめにしてパッケージングして、フレームをつけて仕上げる。これだけです。

とまあこれだけといってもすべてが手作業なのでひとつひとつの工程にとにかく時間がかかりますし、サイズが微妙に合わないものを調整したり、細かな変更を加えたり、ボンドがしっかり乾くのを待ったりと想像する以上に時間が必要になります。どれくらいかというと作品もよりますが、1日2日でさくっとできるものもあれば、1週間くらいかかることもあります。まあ1週間(ときにはもっと)かかると書くと驚かれるかもしれませんが、これは実際の作業時間ではなく、ボンドで貼った紙をしっかりと乾かすためプレスする工程に時間をかけたり(時には丸一日かけることもあります)、細かな変更で作り直したりすることがあるからです。実作業の時間がかかるわけではないのですが、個々の手順をきちんとこなしていくとどうしても時間がかかってしまうのです。

作り直しというのは、たまに起こります。たいていは設計図どおりにうまくいくのですが、手作業がゆえのミステイクや歪み、あるいは途中まできてすっかり気が変わってしまうなんてこともあります。そんなときは作業の手をとめて手直しの方法を考えます。場合によっては頭から全部やり直すこともあります。どうしても納得がいかないケースではそうせざるをえないです。ここらへんは職人の仕事の考え方に近いかもしれません。

言葉を並べるばかりだとわかりづらいと思うので、また写真つきで説明してみたいと思います。前回の4で書いた既製の額縁と古い切手を使ってサンプル的に作ってみたいと思います。まず最初は額の裏側についている金具や留め具を外す作業から。ドライバーを使って外したあと、ドライバーの反対側(持ち手の部分)を使ってネジがついていた部分をならしていくといいです(凹凸ができていることが多いので)。このコラムで書いている額装では留め具を使わないので思い切って外してしまいます。

それから必要な道具を用意します。ここでは厚紙やらマットに貼る紙やら金具やらそういったものですね。そうした準備が終わったらどういう額装作品が作りたいのかおおよそのイメージを頭のなかでも紙の上でもよいので描いてみます。このとき額装の技法やマットに貼る色紙なんかを決めてしまってもよいです。そして全体のイメージが決まったら、メモ用紙やノートなどに自分でプラモデルの型を作るみたいに設計図を書いていきます。

設計図をもとにして厚紙をカットしていきます。今回はパッスパルトゥ・サンプルという技法を2枚重ねてみます。それだけだと味気ない感じがしたので、あいだにスチレンボードを挟むことで少しだけ立体感を出してみました。

カットした厚紙に色紙を貼り、重ねて切手のためだけのマットを作ります。中の色は切手の色を参考にしています。

スチレンボードをあいだに挟んだので少しだけ高さが出て立体感が感じられるようになっています。

金具や留め具で裏側をとめないため、壁に飾るための裏板を作ります。

こんな感じのリングがつきます。このリングだけで額全体を支えることになります。なのでしっかりとボンドで貼り付けます。

パッケと呼ばれる作業をします。ガラス、作ったマット、台紙に裏板を重ねて、クラフトテープなどで4辺を封をするように包みます。こうすることでひとつのセットになり、中にいれた作品にホコリなどが触れないようにする効果があります。このあたりは保護を目的とした職人的な額装の仕方の影響が強いです。

額をつけて、仕上げの作業をします。留め具を使わないため額縁より多少出っ張ってもつけることができます。

ボンドが乾いたら完成です。額装の基本的な流れはこんな感じです。さらっと見て行ったのでかんたんにできそうに見えますね。実際には紙を一枚一枚貼るたびに乾かす作業が入ったり、サイズを測りながらああでもないこうでもないと悩む時間があるので思ったよりもずっと時間がかかることの方が多いです。まあでも作品作りというものはそうして悩みながらあれこれ考える時間がたのしいというかとても大事な部分だと思うので、時間をかけてゆっくり丁寧に作っていくことが大切だと考えています。

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